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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第二編〜五章〜悠樹√〜
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お祭り気分 #11


「中、一緒に行こうか」

「はい、そうですね。護君ならそう言うと思ってました」

「お、おぅ……」


 予想通りの反応が、護から返ってきた。


 これで良い。葵は自分に言い聞かせる。悠樹と比較されて自分が上にこなかったのは嫌だというか、気が遠くなるというか、良い気分にはならないが、護はそういうタイプだ。


 だから、これで良い。


「中で休憩することにしました」


 二人で自分のクラスまで戻り、薫と心愛に言う。


「まぁ、二人がそれでいいなら」

「他のところ見てきたらいいのに」


 当然の反応だ。外から見て自分達のクラスの出し物がどうか、喫茶店がどう映るのか判断することは必要だ。


 葵も、出来るのであれば、次に生かせるように上級生の出し物などを見て回りたい。だが、優先順位は違う。護についていく。護の側にいる。今は、それが大事。


「まぁ、なんとなくだ、なんとなく」


 護はそう答える。


(嘘)


 薫と心愛の二人にその言葉がどう聞こえているのかは知らないが、護はあまり気にしてなさそうだ。


「ふーん、そう」

「注文、どうするの?」

「あー、そうだな…………」


 結構、真剣に悩んでいる護。頼むつもりがなかったのか、本当に考えているのか。


「葵はどうする?」

「え、私ですか……?」

「おぅ」

「私は護君と一緒のものがいいです」

「それでいいのか……?」

「はい」

「葵が好きなものとか……」

「いえ、護君が選んだものならなんでも大丈夫です。私、嫌いなものとか、あまりないですし」

「まぁ、それはそうだが……………………」


(せめてもの………………)


「うーん、そうだなぁ…………。じゃ、ミックスジュースで」

「はーい。チケットどうぞー」


 チケットを受け取り、葵は護の手を取る。少しの間だけ。ちょっとだけ、ほんのちょっと。


「葵……?」

「どうしましたか?」

「あ、いや……。構わん」

「はい」



(ん…………)


 店内に入って十分以上は経過した。注文したコーヒーもほとんど飲んでしまって、いつまでも居座っているわけにはいかないが、クラス内の様子を確認しながら悠樹は、普段通り読書に勤しむ。


 ピークの時間は過ぎているので当然満席になることはないが、人の動きはまだまだある。


(ん…………?)


 視線を本に戻そうとしたその時、手を繋いで入ってくる護と葵の姿が目に入った。思わずズラしたくなってしまったが、目線が合い、護がこちらに向かって空いてる手を振ってくる。


「待ってた」

「あはは…………」

「一緒に」

「はい」


 護は悠樹の横に。葵は対面に。


(私のもの……)


 盗られるわけにはいかない。悠樹と護、二人の関係性は強固なものになっている。盗られると思ってるわけではないが、可能性は勿論ある。有利な部分もあれば、不利な部分もある。


(仕方ない)


 そういうものだ。


 悠樹は勝者だ。だが、誰にも伝えていない。二人の中だけのこと。葵達からしてみれば、まだ勝負はついていないのだ。だから、仕掛けるのは当然のこと。


 早く言ってしまいたい。そうすれば、楽になれるのだから。

 


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