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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第二編〜五章〜悠樹√〜
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お祭り気分 #8



 全く気にしてなかった。薫も同じようで、目を大きく開け、悠樹の方を見ている。一時間だけの休憩時間を無駄にしないよう、早く着替えよう。心愛はそれくらいしか考えていなかった。


「い、言われてみれば…………」

「あはは」

「見ておくから。早めに」


 読んでいた本を閉じ、悠樹はスタスタと部室の外へ。


「もしもの時は……、合図、する」

「ありがとう……ございます」


(ふ、ふぅ…………)


 一息つく。


 ここは青春部の部室だ。ましてや、更衣室ではない。悠樹が言うように、護がいる。薫はすっかり忘れていたようであるが、心愛は違う。


 自分のそれは薫と比べて立派ではないので、勿論恥ずかしいという思いはある。でも、それだけ。護なら、と考えてしまう。護は気にしないから。ただ、部員以外の出入りも当然あるので、ここは悠樹に従っておくのが無難である。


 慌ただしく着替え終わった薫を見、心愛は悠樹を呼びに行く。中からノックし、声をかける。


「ありがとうございます。悠樹先輩」

「ん」


 返事をした悠樹はそのまま自分の席につき、読書に戻ってしまう。


「悠樹先輩はここで何を?」

「読書」

「そうじゃなくて…………」

「ん、分かってる」


 そんな悠樹の返答に、自分の横で薫がくすくすと笑っている。


(驚いた)


 悠樹のキャラに似つかわしくないノリだ。


「今日は当番じゃないから」

「一日中?」

「うん」


 即答。


「見て回ったり、しないんです?」


 心愛は思わず聞いてしまう。一日フリーであれば、好きなことが出来る。ましてや、今は文化祭。心愛なら、この高鳴りを抑えることは出来ない。


「ん、別に…………。今はいい」


 考えられないといった様子で、薫も悠樹を見ている。


「そう、ですか」



 不思議そうな顔で悠樹を見る、心愛と薫。せっかくの文化祭なのに、という心の思いが見て取れる。


(ん……………………)


 勿論、悠樹にも二人の気持ちは分かる。普段の学校生活とは違う非日常的な空間で、のびのびと、自分らしく、楽しむことが出来る。年に一回というのが、更にそれを加速させる。文化祭がそういうものであるということは当然、理解出来る。


(でも)


 それだけでしかない。自分は良い。元々悠樹は、一人でいるのが好きだ。心の許した人と一緒に過ごすのが好きだ。不特定多数の人とは苦手、むしろ、嫌いなレベル。


 だから、悠樹はこうして、この部室にいる。


 青春部の部室にいれば安心出来るし、ゆったりと、安心感を得られる。


「あたし達のクラスのところ、来ませんか? 悠樹先輩」

「え」

「喫茶店。ちょっとわちゃわちゃしてるかもですけど! そこでもゆっくり出来ると思います。ね、心愛」

「ま……、まぁ。そうね。薫の言う通り」

 

 

 

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