お祭り気分 #7
〇
「ちょっと、薫?いつまで喋ってるのよ」
「ごめんごめん。久しぶりだったからさ」
心愛は、接客中に喋りこんでしまった薫を窘める。
「せっかく変わってあげたんだから、ちゃんとして」
「怒らないでよねー」
「はいはい。それで?久しぶりって言ってたけど」
「雪菜ちゃんが来てたからね」
「え?雪菜が……?」
「うん」
洗い物をしていた手を止め、薫に目をやる。
七夕パーティの時以来だろうか、高校が違うこともあって、なかなか会う機会はなかった。連絡先は交換していたし、ちょくちょくやり取りはしていたが、時間を合わせて会うことまではなかなか。
「薫でも久しぶりなんだ」
「どういうこと?」
「幼馴染同士でしょ? 護の」
「それはそうだけど、結構遠いから、そんなに会ってるわけじゃないよ。お互いの用事もあるしね」
「そ」
「直接会う必要もないでしょ? このご時世」
「それもそうね」
アプリを使えばすぐに連絡を取り合うことが出来るし、ビデオ通話で、会わなくても相手の顔を見ながら話すことが出来る。電話があまり好きじゃない雪菜とすることはあまりないが、心愛はよく使っている。
「成宮さーん、安田さーん、二人とも休憩いってきていいよー」
「分かった、ありがとう」
「はーい。行ってくるー」
「どーぞー」
休憩から戻ってきたクラスメイトとバトンタッチ。休憩が終わるとまたここに戻ってこないといけない。他のクラスの出し物をゆっくり見て回ってる時間はないが、それは皆同じ。シフトを決めて、順番に回している。
「じゃ、心愛。行くよ」
「あ、ちょっと待ちなさいよ!! 引っ張るなって!」
〇
「ん…………? 心愛? 薫?」
「こんにちは〜。お疲れ様です」
「ん」
薫に半ば無理やり連れてこられた先は、青春部の部室。教室は全て喫茶に使ってしまっているため、更衣等、休憩は各自自分達の好きな場所で、ということになっている。
「どうしたの…………? クラスの方は」
「休憩です!」
「ん、分かった」
部屋の隅に二人で並び、着替えを始める。心愛が着ているのはバイト先のファミレスの制服であり、服装的には問題なく、むしろ着たままの方が出し物の宣伝にもなる。
が。
(ちょっと恥ずかしいし……)
クラスメイトだけならまだしも、不特定多数の人に見られるというのは嫌だ。スカートも少し短い。
「二人とも」
「どうしました?」
「護がきたら、どうするの……?」
「「へ……………………?」」
二人で同じ反応をしてしまう。
「休憩でしょ……? 二人は。護もまだだと思うし……、そのうち、くる…………かも?」