お祭り気分 #4
「じゃぁ、タピオカにしよっか」
「うん……。分かった。流行りだもんね」
「だねー。味は何にする?」
「それなら、抹茶がいい、かな……」
「やっぱり頼みたいものあるじゃないの」
「えへへ………………。抹茶ある………………? まーくん」
メニュー表を確認する。俺は飲んだことがないから美味しさとかよく分からないが、薫や心愛を含め、クラスの女の子達が、ぜひ、ということで、メニューに追加された。葵は俺と同じでタピオカに対しては興味がないようで、その流れには乗っていなかった。
流行りのものだし、受けの良いものでもある。文化祭にぴったりといえばぴったりだ。まぁ、運営してる側からしてみれば、過度な集客というかなんというか、必要以上に入ってしまうとそれはそれでしんどいから困りものでもある。
「あるな」
「お姉ちゃん、抹茶で大丈夫だよね……?」
「うん。気にしなくていいよ」
「なら、抹茶のタピオカ、二つで」
「あいよ」
〇
護から食券を受け取り、魅散にくっつくようにして教室の中に入る。
賑やかで、華やかで、自分には似合わない場所であるが、雪菜は我慢する。だってこれは、文化祭だから。護のクラスの出し物だから。ずっと楽しみにしていたから。
「あ、魅散さん! 雪菜ちゃん!」
後ろから呼び止められる。薫だ。
「来てくれたんですね! 二人とも」
「折角だしね? 雪菜」
「え……? う、うん」
「あたしにとっては懐かしいお祭りだし、雪菜からしてみれば新鮮だし。それに、雪菜が来たがってたのもね」
「薫ー? なに喋ってるのー? そんな暇ないよー」
「ごめんごめん。すぐに案内するー」
ピークから少し過ぎているだろうが、席は満席に近い。入り口から近い二人用の席に案内される。食券を薫に渡し、席に着く。教室の中ということもあって席と席の幅はあまり広くなく、雪菜はちょっとだけ窮屈さを感じてしまう。
「多いね、人が…………」
「大丈夫?」
「うん。頑張る」
「そ。無理はしなくていいわ。出来る限りで」
「うん。分かってる」
廊下から聞こえてくる楽しそうな声。教室内でも、それは変わらない。煩い、と少し思ってしまうが、文化祭とはこういうものでもある。それに、人が多いのは最初から分かっていたことだ。それでも雪菜は、御崎高校の文化祭に来てみたかった。護がいるこの場所で。ここで、自分の感情を整理したかった。
「すぐに持ってきます。少しお待ちくださいね」
「はーい。待ってるわね〜」