お祭り気分 #3
「さぁ、護君」
「なんだ? 葵」
「いよいよ、ですね」
「あぁ、そうだな」
教室内の様子を見ながら、俺と葵は、廊下に設置した受付けに。廊下だと通行人の邪魔になってしまう可能性もあるので教室内でも良かったのだが、限られたスペースを有効に使うためにこうした。
開始まであと数分というところでもう既に、俺達の前にはもう待ってくれている人達がいる。
「頑張りましょう」
「おぅ」
文化祭開始を告げるチャイムが鳴る。今からスタートだ。
〇
四時間ほど経過しただろうか。一時を回り、ピークが過ぎたようで、少しずつ客足が減ってきた。受付けで注文を取り食券を渡す、という形をとっているが、室内でのオーダーも受け付けていたため、ある程度負担は分担出来たように俺は思う。
「疲れますね…………」
「だなー…………」
バイト等の経験が全くない俺と葵にとって、このちょっとのことでも初めてのことだらけで、緊張してしまうというかなんというか。オーダーを聞いてお金を受け取る、それだけのことが難しく感じてしまう。
「二人、空いてますか…………?」
「はい、今確認します…………って、雪ちゃん魅散さん」
「やっほー、護くん、葵ちゃん」
「あ、どうもありがとうございます」
軽く挨拶をした葵は、こちらに視線を送ってくる。
(まぁまぁ……)
「予定通りきたわよ」
「ありがとうございます」
「どう、かな……? 今、大丈夫そう?」
「うん。問題ないと思う。人も減ってきたところだし」
「そう。あたしらも長居するつもりはないし、ちょっとの間楽しませてもらうわ」
「全然気にしなくていいです。ですよね? 護君」
「う、うん。葵の言う通りです。魅散さん」
「ゆっくりしよ?」
「そう? 雪菜も言うなら」
「うん…………ありがと」
「じゃ、まずメニューを」
「あ、そういう形なんだ。雪菜先に選んでいいよ」
メニューを雪ちゃんに手渡す。
「うーん……………………。何にしよう」
真剣に悩んでる雪ちゃんを、魅散さんはにこにことしながら待っている。雪ちゃんもチラチラと魅散さんの方を見たりして、同じものを頼もうとか考えてるのだろうか。
自分一人で決められないからお姉ちゃんに頼ろうとしているのか、そういう雰囲気がみてとれる。
「な……、何がいいかな? お姉ちゃん」
「んー? 雪菜はどんなのがいいの?」
「特に、希望はないけれど……。お姉ちゃんと一緒のがいい」
(やっぱり)
「いっつもそうねぇ。雪菜は」
「うー、一緒がいいの」
「はいはい」