お祭り気分 #2
それじゃ、と手を振りながら、杏と佳奈は離れていく。
「はぁぁ……」
見えなくなったその瞬間、成美は、疲れたと言わんばかりにその場に座り込む。精神的にやられてしまいそうだ。
「どうしたの…………?」
「大丈夫、大丈夫」
「そう……」
杏は何故、あそこまで割り切れるのだろうか。自分達が青春部として参加したいと思っていたこの文化祭を、どうして簡単に諦めることが出来るのだろうか。
杏にどんな用事があるのかは知らない。文化祭より、青春部より優先されるものなのだから、とても大切な、重要なことなんだろう。
だからといって、杏のことを理解できるわけではない。
(だって……………………)
今年こそは。成美はずっと、ずっと。
成美にとって、護は特別だ。そしてそれは、渚だって、他の皆だって。我慢出来るものではない。抑えられるものでもない。
好き、だから。
〇
「大丈夫かなぁ」
「ん? どうかしたのか。杏」
「いやぁ、成美のことがねぇ…………」
成美の言いたいことは分かる。だって、自分と成美は似ているから。
「成美達には来年があるから」
「それはそうだけど……。あの子達だけででも出来たら…………」
「一応、責任者がいないといけないからな。決まりだ」
「だねぇ…………」
自分達の決定に一番反対したのは成美だった。分かっていた。だから、申し訳なさもある。自分が成美と同じ立場なら、自分もそうしただろうから。
佳奈の言う通り、成美達、下級生には来年がある。自分達とは違う。まだ先がある。次がある。
(そうじゃない、そうじゃないのは分かってるよ……)
杏だって、皆と一緒に楽しみたかった。護と一緒に過ごしたかった。皆、気持ちは同じなはずだ。杏は部長だから、誰よりも感じている。
いつもならいうことを聞かせて自分達のことを優先させてきたが、今回ばかりは難しかった。そうはいかなかった。家族として、姉として、杏にはやるべきことがあった。
「また集まるか?」
「え……………………?」
「ハロウィンの時にでも皆で。七夕の時みたいに」
「佳奈の家に?」
「そういうことになる。良いだろう?」
「佳奈がいいって言うなら私は構わないよ」
「なら、決まりだ。咲夜にも伝えておく」
「いいの……?」
願ったり叶ったり。成美や他のメンバーに対しても、埋め合わせをしなければ、と思っていた。
「構わん。その方がいいだろ?」
「うん。もちろん……。ありがと、佳奈」
「気にしなくていい」