最後の #4
それじゃぁ、と。悠樹は目線だけで挨拶を交わし、その場を離れる。今日この後時間があるかどうかは分からないが、一旦。
この三日間、悠樹は特に予定はない。クラスの出し物についても、当日にやることはない。それほど大きなことをするわけでもないので、ワイワイガヤガヤとしたい者だけがやっている。
悠樹にとってはそれが有難かった。護との時間はあまり取れそうにはないが、そもそも悠樹は賑やかなのはあまり好きではない。なので、最初からクラスで楽しむ気はなかった。悠樹にとってクラスメイトはクラスメイトでしかなく、それ以上でもそれ以下でもない。この学校だけの、限定的な関係性だ。
「悠樹、ちゃん………………っ」
教室に戻ろうとしたそのタイミングで、後ろから声が。
「麻依ちゃん……?」
「うん……。どこ、いってたの…………?」
「護のとこ」
「そう」
麻依は、悠樹の友達だ。去年も今年も同じクラス。麻依はクラスメイトの中でも特別な存在だ。護と、時雨や氷雨と同じくらい、自分とよく似た、とっても大切な友達だ。麻依だけは、別だ。
「悠樹ちゃんは……、今日から、どうするの…………?」
「どう、とは……?」
「文化祭、だから…………」
「護のこと?」
「それもあるけど。一緒に……いるのかなって」
「いや。そんなには」
「そう、なんだ………………」
「向こうも、忙しいから……」
「大変、だね…………」
「仕方ないよ」
護はクラス委員長で、文化祭の実行委員でもある。葵と同じだ。やりたい人がいなかったからか、葵が誘ったのか、理由としてはなんでもありえる。
(護だから)
「そうやって割り切れるのは……、私には…………」
「そう…………?」
「だって……、二人はそういう関係、でしょ……」
「それはそう、だけど…………」
「私なら……………………。我慢出来ないよ」
「我慢は……してないよ。麻依ちゃん」
「へ……………………?」
「してないよ。私は……」
している部分もある。そして、麻依の気持ちも分かる。でもそれは、仕方ないのだ。時間はあるわけで、悠樹と護の関係性によって、それは保証されている。時間は今だけではない。これからも、たくさん護といることが出来る。有限であっても、時間はまだまだある。
「悠樹ちゃんがいいなら…………」
「ん」
「今日も一緒に、いれる……?」
「ん。問題ない」
「やった……。ありがと」
「ん…………」
「よろしくね……。悠樹ちゃん……っ」
「こちらこそ」




