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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第二編〜五章〜悠樹√〜
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ぶんかさいっ!! #8



 蜜柑のその問いかけに心愛は、思わず抜けた声で返事をしてしまう。意識していなかった、考えてもみなかったところからの質問だったから。


 自分が楽しそうだった、と。蜜柑はそう言った。


 (楽しそう)


 聞き間違いでもなんでもない。蜜柑は間違いなく、楽しそう、その言葉を自分に言った。


 (うんうん)


 楽しそう、ではなく、楽しいわけで。蜜柑が言ったことは正しい。間違っているなんてことはない。


 その通り。楽しくなかったら、護の隣にいようとは思わない。楽しくなかったら、護を好きになんてならない。護だけじゃなく、薫と葵、青春部の皆も。一緒に居てそこに楽しみがなかったら、好きになるわけがない。楽しめるという前提のものがあるからこそ、心愛はそこに自分の居場所があると感じることが出来る。居場所があっても問題ないと、そう思えるのだ。


 「違う、の……………………?」


 恐る恐る。こちらの顔色を伺うように、蜜柑は尋ねてくる。


 「ううん。大丈夫」

 「だよね。そうだよね。だって、成宮さんは…………」

 「ん?」

 「いや……、なにも、ない。うん……。大丈夫」


 蜜柑は意図的に言葉を止める。


 (まぁ)


 言いたいことは分かる。蜜柑にその事を伝えたことはないが、知っていても不思議ではない。おおっぴらに言いふらしたこともないし、そういうこともしないが、雰囲気で分かってしまう部分もあるだろう。


 こういう感情を知ったのも、知らされたのも、高校に入ってからだ。中学までの自分とは違う。


 (いや…………)


 自分が変わったわけでは決してない。周りを無理矢理変えたから、自分がそのままでいられる。自分を飾る必要がなくなった。自分は自分だと、意識することが出来る。


 (護のおかげだね、本当に)


 護がいたからこそ、自分を保てているのかもしれない。護がいたからこそ、自分をさらけ出してもいいと、そう思えた。薫という壁があっても、巨大なものがあったとしても、自分から前に進むことが出来た。


 護がいなかったら、心愛は昔の心愛のままだったかもしれない。それはそれで構わないと、昔は思っていたわけだが。


 (今はもう、戻れないよね)


 今は、無理だ。この温かさを知ってしまっている。感じてしまっている。その中に身を置いてしまっている。もう無理だ。昔の自分には戻れないし、戻りたくない。戻る必要性もない。


 (はぁ)


 「大丈夫? 準備の方は」

 「うん。こっちは大丈夫だよ。いつでも」


 護からの呼びかけ。


 いよいよ、だ。


 前を向こう。これからを楽しもう。振り返っている暇はない。

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