揺らぐ気持ち #6
(さてさて……)
葵と並んで、二人で会議室に向かう。文化祭がすぐそこに迫り、廊下や教室は、準備にあたっている生徒でごった返している。邪魔をしないように、俺達は目的地に向かう。
委員長である俺達は、自らが楽しむというより、クラスの催物がどうすればいいのか。そこをメインで考えなくちゃいけない。勿論、自身の感情を思うことは大切であるし、そうじゃないとヤル気も上がらないわけであるが、自分が楽しいからって、他人がそう考えるかは別の話。
「護君?」
「ん? なんだ?」
「何を考えているんですか?」
「いや。特には」
「そうですか。成功するといいですね」
「あぁ、そうだな。俺が今思ってたのもまさに、そういうことだ」
「あらあら」
自分は二の次。皆が楽しめて、成功すればそれでよい。俺はそう思う。
「そういえば護君」
「今度はなんだ?」
葵が次の話題を振ってくる。
「さっきのことなんですけど」
「さっき……?」
「はい。私が声をかける前なんですけど、なんで寝たフリをしてたんですか?」
「あ……………………」
分かってたんだな。実際、寝ていたタイミングもあったわけだが。
「バレてたか」
「はい」
「まぁ、なんというか。二人がな」
「薫と心愛が、ですか?」
「そそ。二人が俺の話をね」
「あぁ。理由も話してた内容も、ある程度分かりました」
「ありがたい」
〇
(まぁ、なんといいますか……)
葵も、薫も、心愛も、護が必要であることを分かっている。勿論、護にとっても、自分達は大切な存在であると。
(それは思い上がりですかね…………?)
薫がいて、葵がいて、心愛がいて。自分達三人との付き合いがあったから、護を青春部に誘うことが出来た。この三人であったからこそ、青春部という選択肢が生まれた。半ば、無理矢理護を誘ったような気がしないでもないが、全員学校生活を楽しめているし、それが安定剤にもなっている。
(薫さまさまです)
葵は委員長であるから、同じ委員長である護との接点は少なからずあった。が、そこに薫がいたから、葵はより、護のことを知ることが出来た。互いに互いの気持ちを知っていながらも、護に想いを伝える勇気が湧いた。
(でも……………………)
報われるかどうかは分からない。頑張ったからといって、成果が得られるわけではない。勉強とは違う。自分一人だけの話ではないし、相手もいる、ライバルもいる。
そこが難しい、と葵は思う。でも、それは自分だけが思っていることではない。全員だ。
だから頑張ることが出来るし、結果が出ないからといって諦められるほど、自分の護に対しての気持ちは小さいものではない。
「大変です」
「何がだ?」
「こっちの話です。気にしないでください」