初めての…… #2
#2
(何にしましょうか……)
せっかくのチャンス(?)なので、咲夜は護を先導し、駅前のファミレスに入店した。護と二人きりになれる機会なんてほとんどないし、休日にこうして出歩く、といったこともそうである。特別なことが同時に起こっている。
「ふむ……」
(決められませんね……)
外食する機会も。するにはするのだが、このような一般的、庶民的な飲食店は、使用したことがなかった。それに、咲夜であれば自分で料理することが出来るので尚更である。
「やっぱり、護様が先に選んでください」
「えぇ? 別にいいですけど」
「お願いします」
先に選びたいと言ってメニュー表を見てたわけだが、何も思いつかない。決めかねる。
「うーん……。そうですねぇ……」
(護様は何を選ぶのでしょうか)
護は、デザートの一覧を見ている。それは、さっきまで咲夜が見ていたページでもある。まだ夕方だ。お腹が減っているわけではないので、必然的に選択肢は一つに絞られる。
「俺は、葡萄のパフェにします」
「葡萄ですか」
良い選択である。葡萄は、夏から秋にかけてが旬で、十月が終わろうとしているがまだまだその季節である。
「それでは、私もそれにします。店員さんを呼びましょう」
「え…………? さては、咲夜さん。最初からそれが狙いでしたね?」
「うふふ。バレましたか?」
護の言う通りである。何も自分で選ぶのが面倒であったとか、このメニューの中に好きなものがなかったというわけではない。
「二人仲良く一緒のものを。これも、良いことだと思います」
「ま、まぁ……………………」
○
「お待たせいたしましたー!」
まんまと咲夜さんに乗せられた形になってしまったわけだが、咲夜は終始笑顔だ。この状況を楽しんでいる。まぁ、それならそれでいいかな、と思うわけだが。
「ごゆっくりどうぞー!!」
咲夜さんが俺と同じ商品を注文したので、当然、テーブルには同じ物が二つ置かれている。
「で、デカいですね……………………。これは……」
「そうですね……。どうしましょうか。護様……?」
「俺に聞かれましても……。ま、まぁ、食べるしか」
二人の目の前に広がるのは、巨大なパフェ。一つで二人分以上はあるような物量のパフェである。
「あはは……」
苦笑い。
見た目に惹かれてそれだけで注文したわけだが、よく見ると「ジャンボ」と書かれている。値段も千五百円ほどで手頃な値段であり、今こうして運ばれてくるまで気が付かなかった。考えてみれば千五百円というのは高い。ジャンボだからこその値段であろう。失敗である。