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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第一編〜二章〜
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買い物


 (皆がいなくなると以外と広く感じるものだなぁ)


 毎日のように自分の部屋として過ごしていたわけだが、部屋に四人も呼んだのも初めてだったし、なにか少しの寂しさを感じる。


 (駅まで送らなくても良かったのかもな)


 帰る時に俺は「駅まで送りますよ」と言ったのだが、成美先輩がそれを「良いよ。そこまでしなくても」と断ったのだ。俺は悠樹の如く少し頑固に出てみたのだが、成美先輩に加え渚先輩までも「護君に悪いから」と言ったのだ。流石に、それ以降は俺も自分の意見を前に出すことはしなかった。


 「護ー」


 しばらく玄関でぼーっとしていたら、リビングから母からの声が聞こえた。


 「何?」

 「暇なんなら、晩ご飯買ってきてもらえるかしら?」

 「良いけど……、今日のご飯は何?」

 「餃子なんだけど」

 「了解」

 「じゃ、お願いね。はい、五千円」


 母さんから手渡された五千円札を手に、俺は一旦部屋へと戻り、それを財布に入れ、俺は家を出た。



 俺が向かったのは、家から自転車で十分ほどの距離にある御崎スーパーだ。御崎スーパーといえどもこの御崎市には、御崎という冠がついている建物は大量に存在する。御崎スーパーだけでも俺が知ってるだけでも五個ほどある。


 餃子を作るのであればまずは餃子の皮が必要となる。


 「餃子の皮ってどこら辺に売ってんだか…………」


 あまり買い物はしない為分からない。


 しばらくの間、ふらふらしていると見知った姿を見かけた。あの後ろ姿は悠樹ではなく。


 「氷雨?」

 「護さん。久し振りです」

 「そうだね」


 俺は少し早足で氷雨の横に並ぶ。


 「護さんも買い物ですか?」

 「うん。母さんに頼まれちゃってさ」

 「そうなんですか……」

 「そういう氷雨は?」

 「私ですか? 私も晩ご飯の買い物です。今日は私が作る番なんです」

 「今日?」

 「はい。平日は私と時雨とで交代で作ってるんです」


 ん? 時雨ちゃんと交代?


 「悠樹…………先輩は?」


 危ない危ない。また呼び捨てにするところだった。まぁ、氷雨の前なら別に良い気がしたけれど。


 「ゆう姉ですか? ゆう姉には休みの日に主に作ってもらってます」

 「なるほど」

 「護さんの家の晩ご飯は何ですか?」

 「ん? 餃子だよ」

 「そうなんですか。実は、私も今日は餃子にしようと思ってたんです」

 「一緒だね」

 「はいっ 」


 俺と氷雨はそれから餃子の皮、ひき肉、ニラ、葱、キャベツ半玉、ニンニク、ナツメグを買い、レジを通った。


 袋に買ったものを詰めていると氷雨が。


 「あ……………………っ!」


 「どうしたの?」

 「キムチを忘れました」

 「キムチ?」

 「はい。普通の餃子も作るんですが、何個かキムチ餃子もつくるんです。以外と美味しいですよ」

 「へぇ。そうなんだ」

 「はい。じゃ、買ってきます」

 「了解」

 「あ、そうだ。護さんは自転車で来たんですか?」

 「ん? そうだよ」


 俺は近くの駐輪場に止めてある自転車を指し言った。


 「そうなんですか……」


 氷雨のすこし残念そうな表情を汲み取った俺は。


 「氷雨は、歩いて来たの?」

 「はい。近いですから」


 そう言われ、途中にあの豪勢なマンションがあったことを思い出した。


 「一緒に帰る?」

 「で、でもそれなら、護さんが帰るのが遅くなります」

 「そんなこと気にしなくて良いよ。帰り道にあるんだし」

 「本当に、良いんですか?」

 「うん。良いよ」

 「ありがとうございます 」


 俺はその少しは悠樹に似た笑顔を見て、少しドキッとさせられてしまう。


 一番最初に会った時から考えると、仲良くなれるとは思ってなかったから。


 氷雨の歩数に合わせて、俺は自分の歩くスピードを調節する。が、それでも歩くスピードの差があるらしく、少し離れると氷雨はトットットと走ってくる。


 「歩くの早いか?」

 「あ、いえ。気にしないでください」


 そう言われたものの俺は少し歩くスピードを落とした。


 それに気付いた氷雨は。


 「別に、気にしなくてもいいって言ったじゃないですか…………」

 「そう言われても、気になっちゃってね」

 「護さんらしいですね」

 「そ、そうかな?」

 「はい」


 そうこうしているうちに、マンションが近づいてきた。


 「わざわざ、すいません」

 「いいよ。気にしないで」

 「はい。あ、護さん」

 「ん? どした?」

 「メールアドレス、交換してもらってもいいですか?」

 「うん。良いよ」


 俺はジーンズのポケットに入れていた携帯を取り出し、氷雨の携帯との赤外線通信を終わらせる。


 「ありがとうございます」

 「うん。また何かあったら連絡してくれれば」

 「はい。それでは失礼します」

 「おぅ。バイバイ」


 俺は氷雨がマンションへと入るのを確認してから、俺は自分の家へと自転車を走らせた。



 部屋に戻るとそれを見計らったように携帯が鳴った。


 「羚か、どうした?」

 「な、お前さっき買い物してたよな」

 「おぅ。そうだけど……」

 「その時、女の子と一緒にいただろ?」

 「あぁ、そうだが…………。それがどうした?」

 「どうしたじゃないだろ!! お前ばっかり女の子と仲良くなりよって」

 「そんなこといわれても…………」

 「まぁ、良いさ。さっきの子は?」

 「氷雨のことか? あぁ、悠樹先輩の妹だな」

 「妹か……………………」


 その後に電話越しに、グヘヘヘヘという変な笑い声が聞こえた。


 羚よ。将来変な方向にはいかないでくれよ。心配だ。


 「で、要件はそれだけか?」

 「あぁ。そうだが」

 「じゃ、切るぞ」

 「おぅよ。また明日」


 はぁ……………………。


 いやいやいや、本当に切るのかよ。


 羚はなんというか女の子には見境がないというか。てか、それを聞くだけに電話してきたのか……。


 またしても、携帯に受信が入った。


 今度はメールだった。


 (また羚か……?)


 そう思い画面を開くと成美先輩からだった。


 その成美先輩からの文面は、「今、時間とれる? 」というものだった。


 俺はすぐに「どうしました? 忘れ物ですか? 」と返した。


 そして成美先輩からもすぐに返ってくる。


 「そうじゃないよ。今から少し会えるかなぁって思って」

 「今から、ですか?」

 「うん」


 成美先輩からのメールは一分も待たずに返ってくる。


 「構いませんけど…………、場所どこにします?」

 「護の家の近くに公園があったでしょ? そこでいい?」

 「はい。分かりました」


 そのメールを最後に俺は公園へと向かった。

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