フェスティバル #13
「……………………」
文化祭が近付いてきた。それに伴い授業時間が少し短縮され、準備に当てられる。それは所謂放課後の時間が伸びたということだ。
「む……」
悠樹は1人で部室にいる。
放課後が増えたといっても、青春部メンバーで集まる時間が増えるわけではない。部でも文化祭に参加するわけだが、メインは当然それぞれのクラスだ。優先されるべきはそちらで、そうしようと皆で決めた。ということもあってか、集まる機会が極端に減ってしまった。
(誰もいない……………………)
一人。
悠樹は、当日の受付役に決まった。だから、基本的に準備期間に悠樹がやらなければならないことはない。お客様を呼び寄せるためのポップ作りなど、そういう物は受付役の仕事だが、受付役は悠樹一人だけではないし、そのやるべき事は協力して終わらせた。自分の役割を終えたものは、当日まで何をしてもいい。他のメンバーを手伝ってもいいし、部活があるならそちらを優先してもいい。だから悠樹は後者を選択し、こうして部室にいるのだ。
やることがない。
読書? 手芸?
今それをやりたいとは思わない。いつでも出来ることだから。
誰かが来るのを待つか、ここで帰るか。二択。一応、他のクラスの観察という選択肢もある。邪魔になることをさすがに出来ないから、ただ単に見るだけ。
(どうしよう……)
家に帰ったところで一人なのは濃厚だ。中学も文化祭だから、時雨と氷雨の帰りも遅い。
ここで一人。家で一人。こういう二択も生まれてくる。
他のメンバーはいつになったら来るだろうか。誰も来ないという可能性も十分にある。
護達一年生は高校生活最初の文化祭だ。気合いが入るのは当然だ。護と葵は委員長だから、より力が入っているだろう。杏と佳奈は三年生。最後の文化祭だ。クラスで一致団結し、高校生活の集大成として取り組むべきことだ。
となれば、単純に考えて、一番余裕のある学年は悠樹達二年生ということになる。実際、誰一人としてそういう雰囲気でやっていないが。
「ん……………………」
(じっとしてても……)
ここで待っているだけでは時間がもったいない。見に行こう。他のクラスを。邪魔にならなければ、邪魔をしなければ、なんら問題は無い。