フェスティバル #13
聞き返してしまった。護から自分の予想と違った答えが返ってきたからだ。
明日が休日であれば、薫は頷いていた。だが、違う。平日だし学校は続く。
「そうだ。なんか変か?」
「学校だよ? お昼はお弁当も学食もあるし…………」
「母さんに頼んだら、薫のも作ってくれると思うぞ。肉じゃが、食べたいんだろ?」
「いやいやいや。それはお母さんに悪いよ」
この機会を逃すのは痛いが、そこまでしてもらうのは申し訳ない。
「うーん、そうか?」
「うんうん」
(でも……………………)
護の母ならやってくれる。断ることは絶対にないだろう。それは分かる。
「分かった」
「ごめんね……」
「まぁまぁ」
手間になる。といっても、護がお弁当を持ってくる頻度はそれなりに高く、そこに一日薫の分が加わるだけであるなら、そこまでという感じではある。たった一日だ。薫もお弁当を作ったことがあるのでそれに必要な労力は知っているが、天秤にかけてどうかという話である。
(まぁ)
作るのは護の母だし判断するのもそうだが。
「そういえば」
「なになに?」
今聞きたいこと、話したいことがなくなってしまったので、護から話を振ってきてくれるのは助かる。この時間をまだ続けたいから。
「課題、薫はもうやったのか?」
「課題…………? どのやつ?」
(何かあったかな……………………)
「明後日くらいに提出の課題あっただろ。数学の」
「あぁ……………………」
「その反応はやってないな?」
「えへへ。何も手付けてないよ」
うっかり、うっかり。課題があること自体忘れていた。
「問題集だっけ?」
「そうそう。解くだけのやつ」
「どれくらいだっけ」
数学は生徒の達成具合によってクラス編成がされており、薫と護は同じクラス。葵とも同じだ。心愛はそれほど数学が出来るわけではないので、違うクラス。次の編成時に上がってくる可能性は勿論あるし、逆に自分達が落ちる可能性だってある。
「一ユニット全部だ。だから、十ページくらいだな」
「ふむふむ……………………。多いねぇ」
「何もやってないならちょっと大変だな。今からしないと」
「そうだねぇ……………………」
後、一日。提出期限である明後日の数学は午後にある分、まだ時間に余裕があるように思えるが、範囲が狭いわけではないので、明日の夜や当日の休み時間などを使ってやろうというのは、少々骨が折れる。
「護はどこまでやったの?」
「三分の一くらいだな。いまからちょっとだけやるつもりだ」
「そう。じゃぁ、あたしもやろうかな」
「そうだな。それがいいと思うぞ」
「だよね」
後回しはよくない。出来る時にやっておく。
「それじゃ、また明日」
「あぁ。またな」