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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第二編〜五章〜悠樹√〜
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フェスティバル #10



 「ただいまぁ…………」


 悠樹が見えなくなるのを待ってから、薫は家に入る。


 「今日はいつもより遅かったのね……。って、どうかした? 薫?」


 母が心配そうにこちらを覗いてくる。


 「え? え? なんにもないよ」

 「そう? ならいいんだけど」

 「うんうん」


 何もないわけではないが、気にする必要もないといえばそうなのである。後、恐らく、母は気づいているだろう。気づいていない振りをしているのだ。母とはそういうものであるし、薫は何度も、母のそういった部分を感じている。


 自分の行動の結果だ。あそこで、薫は悠樹に護を譲った。一緒に帰ればよかったのに、そうしなかった。だから、悠樹は護の家にいた。


 だから、仕方ない。


 (んー……………………)


 自室に戻った薫は、布団に寝転びながら考える。


 "仕方ない"


 そう思うことが多くなった。無論、高校生になってからだ。まだ数か月。当然中学時代の方が何年も長いわけだが。


 (はぁ…………)


 「だってねぇ…………………………?」


 (はぁ……)


 再度溜息をつく。


 護は自分だけの物じゃない。分かりきっていることだ。そのことを、高校生になり思い知らされた形になっている。気がつけば、いつも隣にいたはずの薫が追いやられている。


 そして、これは、"仕方ない"ことなのである。


 「悲しいなぁ」


 青春部に入っていなければ、敵は、恋敵は、葵と心愛だけだった。基本的にはそうだっただろう。少なくとも、護との関係性の構築の上で、青春部に入ったことは失敗だろう。でも、それだけだ。それだけなので問題はないし、青春部に入ったこの行為だけで、護とのこれまでが破壊されるわけではない。


 薫は何度も思っているが、自分の強みはそこである。たかが数か月の関係ではない。何年も、十何年もある、護との付き合い。これは誰にも負けないし、誰にも超えられないものだ。


 もっと。もっとなのだ。


 夏休みはもう終わってしまっている。文化祭準備も進めないといけないことから、クラス単位での活動が多くなる。青春部にでもあるが、比重はクラスに置かれる。


 (まもる…………)


 「うぅー……………………」


 布団を手繰り寄せ、顔を埋める。


 護は委員長だから、同じ委員長である葵に取られる。薫より葵だ。手伝うという最もな理由をつけたとしても、心愛がやってくる。同じクラスであるし仕方ないことでもあるが。


 (まただ……………………)


 仕方なの無いことばかりだ。中には薫の努力でどうにかなるものもあるかもしれないが。


 「ん……………………っ。護……」


 寂しくなる。少し。


 いや。


 (とても)


 「薫ー? 何してるのー? ご飯食べに早く降りてきなさーい!」


 そうだ。まだ食べてなかった。


 「はーい。今行くよー」

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