フェスティバル #9
「護は先に帰ってて」
「どうしたんだ? 薫」
下校時刻。文化系の部活はともかく、サッカー部や野球部などの運動部はもちろんギリギリの時間までやることが多いので、この時間になると、校門前はいつもいっぱいになる。青春部の面々はいつもそこに紛れているということになる。今日は、杏が欠けている。戸締りのため佳奈もいないので、七人での下校だ。といっても、全員が同じ道を歩いて帰れるわけではないので、ここまで。ここから同じなのは、薫、護悠樹の三人だけだ。
「ちょっとハンドボール部のところ行こうかなって」
「今からか?」
「まぁね」
当然、護からは疑問が飛んでくる。もう帰らなければならない。放課後になってすぐに行くならまだしも、今行く意味はほとんどない。実際、薫もそう思っている。
(でも)
「まぁ、いいが……………………。あんまり遅くなるなよ」
「うんうん。分かってるよ」
いくら外が明るいといえども、時間は遅い。気をつけなければならない。
「それじゃぁね。悠樹先輩も、また明日」
「ん、ばいばい」
〇
(仕方ないよねー…………)
薫は一人で帰宅する。二人を避けるようにハンドボール部へと向かって、片付けまで手伝った。もう七時を回ってしまっている。秋にもなり、三年生は引退してしまった。その為、ハンドボール部は若干人数が足りていない。薫が呼ばれる機会も増えるだろうし、今日みたいに片付けだけでも手伝ってほしい。メンバーはそう言っていた。
なんとなく、なんとなくだ。薫は、こうした方がいいと思った。だから、動いた。見方を変えれば、悠樹に譲った。そういうことにもなるが。
悠樹の気持ちは分かる。中学の時はほぼ薫の独壇場であったし、他の人のことを考える必要はなかった。強いていえば咲くらいだが、互いのことを分かっていたので問題ない。
(まぁ、それは今もそうなんだけど……)
今は違う。立場も、状況も。
「さ、急いで帰らなきゃ」
ゆっくりしてたら護に怒られてしまうし、明日の宿題だってある。
「ほぇ……………………??」
護の家から出てくる悠樹。
「ん、薫……………………。おかえり……」
「ただいまです……。じゃなくって……っ!!」
(まぁまぁ…………)
「ん……………………?」
悠樹は首を傾げる。安定の行動だ。見慣れた行為だ。
「何してたんですか?」
「ご飯……。護のお母さんがどうぞって言うから」
「あぁ……………………。そうでしたか」
そんなことだろうと思っていたが、実際にそうだと。
(なんだかなぁ…………)
「じゃ…………。また、明日」
「あ、はい……。お疲れ様です。悠樹先輩」




