フェスティバル #7
(はぁ…………)
杏は一人で学校を出る。いつもなら、部活終わりなら、横には護がいる。佳奈がいる。他の皆がいる。一人になることは決してない。
(まぁ、仕方ないけどねぇ)
部室に顔を出せない日もある。それは、当然である。部長だからって毎日行く必要はないし、そもそも、今の杏にはそんな時間もない。
何も放課後だけではない。昼休みも部室を開けることは可能であるが。
(何してるんだろうね、私がいない時は)
気になる。
杏が主導になることが多い。自覚している。自分の意思でやっているのだから。佳奈の力を借りて、青春部を作った。作ったのは、杏なのだ。
(もう一年切ってるもんねぇ……………………)
時間の経過というものは非常に恐ろしいもので、護達がやってきてからここまでは一瞬だった。二学期が始まってしまった。杏や佳奈、三年生の時間はあまり残されていない。
杏と佳奈がいなくなった後の青春部はどうなるのだろうか。誰が部長をやるのだろうか。誰が支えてくれるのか。自分が作ったものだ。気になってしまう。
「はぁ……」
振り返り、部室がある棟に視線を送る。といっても、青春部が面する側はこちら側からは見えない。
(明日はいかなきゃね)
行ける時間が減ってきている。それではいけない。
杏は、それを見届けないといけないのだ。
〇
「あ、護!」
「は、遥先輩……!?」
ガチャ、と部室の扉があく。護の席に座り護を待っていた遥は、すぐさま護のもとに歩み寄る。
「やっときたー。遅いよぅ? 護」
「えぇ……。どうしたんですか?」
「何かあるわけじゃないんだけどね。ここ来たら護と話せると思って」
「お二人方……。そこで話されると私が中に入れないのですが…………」
護の背後にいた葵から忠告。
「悪い」
「ごめんね。葵ちゃん」
「はい」
遥は慌てて護の席に戻る。
(あ……。座ってどうすんの)
護が戻ってきたのだから、自分の場所はここじゃない。
「大丈夫ですよ、遥先輩」
「ふぇ?」
「椅子、まだありますから」
「分かった。ありがと」
座り直す。本来なら、その別の椅子に遥が座るべきであるが。
(ん…………?)
「悠樹ちゃん? どうかしたの?」
「ん、なんでも…………」
「そう………………?」
悠樹がこっちをジッと見ていた。本人は「なんでも」と言ったが、その視線はまだ遥から外されない。
「なんなのよー? 悠樹ちゃん」
「ん……………………」
言わんとしていることは分かる。分かるが。
(そんなにねぇ……………………)