フェスティバル #5
文化祭がだんだんと迫ってくる。楽しいことを考えていると時間が経つのが早いというが、まさにそんな状態。
もう雰囲気がそうだ。校内も、校外も。生徒会がチラシを作り、それを配布。よって、それが外にも広まっていく。文化祭に向けて真っ直ぐ進んでいる。
そんな中、俺と葵は先頭に立って仕事をしている。俺らは、流れに身を任せたり、そんなことをしている場合ではない。先生達と連携を取ったり、クラスメイトに頼み事をしたりと。二人だけでは出来ない。全員で、団結して。
時間が経つのは本当にはやい。そのスピードは一定の時間であるはずなのに、感じ方が違う。感情に大きく左右される。ということは、感情をコントロール出来ればいいわけで。たしか、そういった論文が出されていたような、出されていなかったような。
「護君、何考えてるんですか」
「ごめんごめん」
葵につつかれる。
そう。今は会議中。今だけは、遅く感じる。
生徒会長と副会長、それぞれのクラス委員長が集まる会議。全ての学年の委員長が集まると大変な数になるので、一学年ずつやっているそうだ。今日は一年生。俺と葵と佳奈と、青春部の三人が今ここにいる。今日も全員揃わないということだ。会議が終わってから行けば時間があるかは分からない。
佳奈が話している横で、一際大きなリボンが左右に動く。
遥先輩だ。
時々こっちを見て、ニコッと笑顔をくれる。
「こら」
「えへへ…………」
そんな遥先輩も、佳奈に窘められている。
夏休みの時は、あまり会う機会がなかった。遥先輩は青春部ではないし、それでも何回か連絡したりはしたが、塾に行ってるなどでタイミングがなかなか合わなかった。しかし、今は別だ。遥先輩は副会長であるから、こういう会議の場で頻繁に会う。後は、安定の図書館で。まぁ、頻繁に行くわけではないが……。
〇
「もぅ、護君ってば……」
会議終わり。座ったままの姿勢で、護に話しかける。他のクラス委員長はどんどんと帰っていくが。
「いやー……、ごめん」
「ちゃんと集中してくださいよー?」
「うん」
放課後に行われていたから、葵も護の気持ちは少し分かる。授業で疲れているし、話を聞くことが中心の会議になってしまうと、どうしても別の事に意識がいってしまう。
(まぁ、プリント読めば分かりますけど……)
補足事項があったりはしたが、基本的なことはレジュメに書かれている。なので、どちらかが把握していれば大きな問題にはならない。
「さて、一度教室に戻りましょうか。荷物も置いてきてしまっていることですし」
「あぁ、そうだな。点検もしておいた方がいいだろう」
忘れ物などのチェックは、その日の日直の仕事だが、最終確認は委員長がしてもいい。二重チェックだ。
「それじゃぁ、行きましょう」