フェスティバル #3
今日も今日とて、全員集まらない。生徒会や部活の部長はこの時期忙しいので、当然といえば当然だ。
ということで、佳奈と杏先輩はいない。会議がはやく終われば部室に顔を出すと言っていたらしいが、多分無理だろう。今日は心愛もいない。アルバイトがある。心愛のバイトはファミレスのウェイトレスで、心愛がいる時に何度か足を運んだこともある。
あべこべ喫茶。喫茶の部分だけとりあげれば、心愛のバイト先の制服の雰囲気もいいかもしれないが、メイドかと言われればそれは違うので。そもそも心愛は女の子なので、接客をするとなると、執事の方になる。
悠樹は、いつも通り俺の横に座っている。今日は手芸ではなく読書。ブックカバーをかけているためどんな本を読んでるのかは分からないが、奴隷やら殺人やらなんやらと、殺伐とした単語が見える。
「……………………読む?」
「いえ。いいです」
「ん……」
本はたまに読むが、だいたい文庫サイズのもの。ハードカバーとかその類の物はあまり読まないし、文庫サイズであっても四百五百もページ数があるような本は読まない。悠樹が今読んでるのは、まさにそれだ。見ただけで、気が湧いてこない。
何をしようか。他の部活と違って、何か明確な目的があるかもしれない。杏先輩は「あるよ」と言いそうだが、目に見えるものかと言われれば、俺はそうじゃないように思う。まぁ、何度も言うが、この自由がいいところではあるが。
「今日は三年生方がいないですね……」
「そういえばそうだねぇ」
言われてみればそうだ。悲しいことであるが、そのうちこれが常になってしまう。杏先輩と佳奈の卒業はもう近い。あと半年程度だ。年度が代われば一つ上がり自分達が二年になって、悠樹達が三年になるわけだが……。
「来年、どうなるのかな……」
渚先輩が、ふと声を漏らす。
「そうだねぇ」
佳奈は生徒会長。杏先輩は部長。この青春部を引っ張っている二人が、一緒にいなくなる。佳奈がいる間はいいものの、文化祭、体育祭が終われば、生徒会長の任期満了に伴う選挙もある。
「来年というよりかは……」
「ま、この話はやめましょ。仕方ないよ、こんな話しても」
成美が葵の話をとめる。どうやら葵は、俺と同じようなことを思っているらしい。
成美の言う通り、仕方ないといえば仕方ないので、考えるのもやめておこう。