フェスティバル #2
青春部に向かいながら、俺は考える。
あべこべ喫茶。これをやることになったことについては良い。何を提供するのか、何種類ほどやるのか、まだまだ決めなければならないことはたくさんあるが、これも決めるのは先でいい。
一つ、重要なことがある。
それは、服装だ。メイド服と執事の服装。これを、どうやって用意するかだ。全員分用意する必要はないから、着る人だけど採寸をして作ればいいわけだが、業者などに頼むことはさすがに出来ない。というか、そんな予算はない。
一クラスに与えられる文化祭予算は、一万円から二万円まで。クラスメイトからお金を集めることも許されているが、金額面での大きな負担を強いることは出来ない。
「さてさて……」
案として一番現実味があるのは、咲夜さんに頼んでみることだ。あの家の執事は咲夜さんしかいないが、咲夜さんから知り合いなどに当たってもらえれば、確保は出来るかもしれない。頼んだあとは頼りっきりになってしまうが……。
メイド服に関しては、まだ未定だ。裁縫などが得意な人にお願いするということも出来るが、クラス委員長でありながら、他のクラスメイトの特技などはあまり知らない。身近な人間では悠樹がそうだが、そもそも学年画違うし、悠樹は、マフラーとかをメインに作る。服、それもメイド服ともなれば、勝手が違う。簡単に頼むことは出来ない。
「ん……、護……………………」
部室棟の階段を登っていると、丁度悠樹を発見。一緒に行こう。
「おはようございます」
「ん、おはよ」
夕方であるし、全くおはようの時間ではないが、そう言ってしまう。今日初めて会う時はそう言うことにしている。
「考えごと……?」
「まぁ、文化祭のことで」
「委員長、だもんね……。護」
「えぇ……………………」
部室に入る手前、悠樹は急に立ち止まり。
「やることは、決まったの……?」
「えぇ、一応。決めないといけないことはまだまだありますけどね」
「ん……。頑張って」
「はい。ありがとうございます」
本番はこれからだ。これから何をするかが、成功に繋がる。葵と一緒に、クラスメイトと一緒に、一致団結して頑張らないと。最高の喫茶店にしていかなければ。
「おふたりさーん」
数秒程度の時間だったが、間に割って入ってくるように、声が飛んでくる。
「成美……」
「そうですよー、成美ちゃんですよー」
「なんのキャラですかそれは……」
「てへ。ま、そんなことしてる場合ではなくてね。はやく入りましょ」
「そうですね」