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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第一編〜二章〜
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探索 #4

 「はぁ…………」

 俺がため息をついている原因はたった一つ。

 昼ご飯代を払わされたことである。

 まぁ、朝に払わされたから、もしかしたら昼も払わされるんではと思っていたのが見事に的中した。俺自身、そうくると思っていたから軽めの食事にしていたが、そんなことを知らない皆はどんどん食べるわけだし、ここで止めて俺が払わされるかもしれない、なんてことを言ったら、葵とか渚先輩とかは絶対に遠慮しそうだったし言い出せなかった。

 「会計は八千二百円になります」

 店員さんの明るい声が痛い。

 ここは九人もいたのに八千円程度で済んだと思うべきなのだろうか。とにもかくにも俺の諭吉よさらば……。

 「それじゃ、後はもう適当にやって流れ解散ってことで」

 「り、了解です」

 なにやらご機嫌な杏先輩に悠樹、薫、葵は引っ張られていってしまっていたが、大丈夫だろうか。あの人の足の速さには驚かされるばかりである。


 「はぁ………………」

 俺はそんな杏先輩を尻目にもう一度ため息をつく。

 「どうしたの? 護? 」

 そんな俺の横に立って、こちら心配そうに覗き込んでくるのは心愛だ。

 「心愛か。いや、お金がな…………」」

 てっきりこの場合心配してくれるのは渚先輩だとおもっていたのだが……。、あ、あれだぞ? 別に心愛が俺のことを心配してくれないって思ってるわけではなくてだな、はぁ、俺は心の中で一体誰に謝ってるんだ……。

 「お金貸そうか? 」

 「良いよ。まだ残ってるしさ」

 「なら言いけど…………」

 その心愛の肩に手を置き、そこからひょっこりと咲が顔をだし。

 「あたしも貸すよ。本当にマズくなったら言って」

 「うん。分かった。二人ともありがとな」

 「良いよ。あたしと護の仲だし」

 「気にしなくていいよ」

 あぁ、二人が女神のように見えてきた。


 「よしっ。一件落着したみたいだし、私達もそろそろどっかに行こうか。渚とかはどこに行きたい? 」

 「うーん。これといった場所はないけど……」

 「あたしも渚さんと一緒ですね。なるべく護がお金を使わなくて済むようなところと思いますが」

 「あたしもそれに賛成っ! 」

 「なるほど。護」

 「な、何ですか? 」

 成美先輩はにかっと笑ったかと思うと、

 「良い友達を持ってるね」

 「それは、心愛と咲だけじゃなく、成美先輩や渚先輩も入れていいんですか? 」

 俺のその言葉に渚先輩は。

 「えっ、あ、私? 」

 と驚いている。

 「そうね。護がそう思ってるのならそれでいいよ」

 「はい」

 「で、護君がお金を使わない路線でいくなら、これから行く場所を護君に決めて貰うのがいいと思うんだけど」

 「いいアイデアだね。渚。そういうことで護、何か行きたいところは? 」

 「そんな急に振られても…………」

 あまり行きたいところがないといったら怒られるのだろうか。うーん……、悩む。服とかなら朝見たって言うし、それは俺達も一緒だったから、重複する行動は避けたほうが良い。

 「ありゃ? 本当に行きたいところ無い? 」

 「特に無いですね。すいません」

 「別に、謝らなくてもいいよ。じゃ、どうしよっか…………」

 五人の間にしばらくの沈黙が訪れる。

 「あっ! 」

 咲が声を上げる。

 「何か思いついたの? 咲ちゃん? 」

 「そうですけど、やっぱり駄目ですね」

 「それはお金がかかるってこと? 」

 「そういうわけではないんですけど…………」

 「言ってみなよ」

 「ここにいる誰かの家に行ければって思ったんですけど…………駄目ですよね」

 「そうだね。私達の家は駄目だね」

 「あたしも駄目です…………」

 「そう言う咲ちゃんはどうなの? 」

 「駄目です。だから言うのをやめようと思ったんですけど」

 「残るは護の家だけど、さすがに女の子四人は………………ね? 」

 「そう、ですね。先輩達が良いというなら別に俺の家でも構いませんけど……」

 「本当にっ!? 」

 「えぇ。まぁ、母さんもいますし」

 母さんなら、あまり気にしないだろうし。

 「なら、行き先は護の家に決定っ!! 」

 成美先輩は杏先輩のように高らかと宣言するのだった。



 選択を間違えたかもしれない。その場の空気?みたいな感じで俺の家に行くことを承諾してしまって、良かったのだろうか。別に、渚先輩や成美先輩、心愛を家にあげるのは嫌では無い。(咲は中学校の時に薫と一緒に、何度も俺の家にあがっている)

 俺だって男だし、そういうのは嬉しい。

 まぁ、先輩達のとても楽しみにしてそうな笑顔を見ると別に良かったのかなぁと思う。

 それにしても、心愛の表情が少し冴えないのが気になる……。



 (護の家か)

 あたしだって、中学の時とかは男の子の友達もたくさんいたし、家にも遊びに行ったり、遊びにきてもらったことは何回もある。高校に入ってからは流石になくなったけど。

 (高校に入ってから男の子の家に行くのは初めてか……)

 と、あたしは思う。休日などに遊ぼうと誘われてその誘いに乗ったことはあったし、それは二人だけとかではなかったからだ。

 (それにしても護が良いと言うとは思わなかったなぁ……)

 護は女の子の扱いに慣れている様な感じは受ける。まぁ、薫と咲ちゃんと一緒にいたからなのだろう。

 女の子の扱いには長けているとは言ったが、それは時と場合によるものではないのかと最近思うようになってきた。

 それにしても、ただ家に行くだけでここまでドキドキするなんて。

 あたしは自分の胸に手を当て、少し考えた。護の家に行けば、それも分かるのかもしれないと。 



 (護君の家……)

 やっぱり何かドキドキする。男の子の家に行くということ自体が始めてなことだ。

 中学の時はお姉ちゃんとずっと同じクラスだったし、お姉ちゃんの男友達との面識がなかったわけではない。私がそれに積極的に関わろうとしていなかったのだ。

 高校に入ってからは自分から話しかけていこうとはしたものの、上手くは出来なかった。お姉ちゃんには、あたしの友達なら渚の友達でもあるでしょ、って言われたこともあったけど。

 護君が初めての男友達になるのかもしれない。もちろんのことだが、男の子を下の名前で呼ぶのも。

 (こんな気持ちになったのは、はじめてかな)



 (護の家に行くのは久しぶりだなぁ……)

 ここしばらくは会う機会もなかった。メールとかもしてみようとは思ってみたものの、護は中学校の時はまだ携帯を持っていなかったし、家に電話をするくらいしか連絡手段は無かった。

 あたしは、ちらっと護に目を向けてみる。

 (ん? 護が難しそうな顔をしている……?)

 もしかしたら女の子四人も家に呼ぶのが嫌だったりするのだろうか。

 そんなことはないはず……っ!)

 あたしはその思いをすぐに払拭する。中学の時、護の周りにはよく女の子が集まっていた。護自身、あたしがその光景を遠目で見ていたが嫌な感じは受けなかった。

 あたしはそれには混ざろうとはしなかったけど。

 それにしても何回も行ったことあるのに、なんでだろう。

 少し楽しみだ。



 (また護の家に行ける……っ!)

 それは良いこと。だけど、なんでだろう。気分があまりのらない。それはもしかしたら渚先輩や成美先輩、咲ちゃんと一緒に行くからなのかもしれない。

 べ、別にそれが嫌というわけではないが、渚先輩や成美先輩を含め青春部の悠樹先輩を除く皆には負けている気がするのだ。無論、咲ちゃんにも負けている。

 はぁ

 自分の胸を見下ろして、咲ちゃん達の方を見ると自然とため息がこぼれてしまう。そうしたところで、何も変わりはしないのだけれど。

 (まぁ、護はそんなことを気にするとは思えないけど、でもやっぱり男の子だし……)

 「心愛? どうかしたか? 」

 ぼーっとしていたからだろう。護が話しかけてくれていたことに気付かなかった。

 「心愛」

 「あっ、 な…………何? 」

 「いや、冴えない顔してたからさ」

 「本当? 」

 取り繕うかのように笑顔で返す。

 「うん」

 「気のせいだよ」

 「そうか? なら、良いけど」

 (はぁ、危ない危ない……)

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