再び #7
(にっしっし……)
文化祭当日までまだかなりの時間があるものの、二学期になれば、いよいよという感じがしてくる。クラスはもう文化祭一色だし、部活もそう。体育会系の部活になれば大会もあり、こちらばかりにかまけている場合ではないが、高校全体が文化祭に染まる。
流れに乗るのは当然のことだ。他のメンバーとの兼ね合いもある。そういうことを考えている場合ではないのは、もちろん成美は分かっている。が、それはそれ。文化祭の時くらい、仲良く。抜け駆けはいけない。護の占領はよくない。
(護が戻ってきた)
葵に連れられていた。どんな話をしていたのか。聞くまでもない。
「ねぇ、護」
「なんですか?」
「決まったら教えてね?」
「えー。楽しみにしておいてくださいよー。そっちの方がいいでしょう?」
(むむ)
正論で返ってきてしまった。
「それはそうだけどぉ。こっちと被らないようにもしないと、でしょ?」
「まぁ、それはそうですけど…………」
「ちょっとだけ、ねっ?」
「いやいや、やっぱり、ギリギリまでは……」
「むー」
(むむむむむ)
仕方ない。
知ったところで何か利点があるわけではないし、当日の楽しみは知らないほうが上がる。それは当然の話。
「あ、そういえば……」
「んん? なにかな?」
「写真、持ってきてくれました? 去年の」
「あ……………………」
(うっかり……)
「ごめんごめん。忘れちゃった」
すっかり忘れていた。自分から言ったのに。
「明日、お願いしますよ?」
「うんうん」
覚えておこう。しっかりと。これは、護との約束事だ。自分で言ったことを忘れてはならない。それだけは。
「写真ってどの写真? お姉ちゃん」
「去年、執事喫茶したでしょ? それそれ」
「ふぇ……。あの写真見せるの……………………?」
(……?)
渚から返ってきたのは微妙な反応だった。見せてほしくない、という意図も感じる。
「嫌なの?」
「嫌じゃないけど……………………」
「分かった。あたしのだけにしておくよ」
「うん……」
ツーショットの写真も数枚あっただろう。それだけは省いて、護のために持ってくる。それでいい。
〇
執事とメイド。成美も渚も女の子なんだから、似合うのはメイドの方だ。俺個人としても、見てみたいと思うのは後者の方だ。その方が、両者の女の子らしい部分も強調される。どことはいはないけど。
(ということは……)
成美も渚先輩も着たということは、もちろん悠樹も、ということになる。同じクラスなのだからそらそうだ。すっかり忘れていた。これは後で悠樹に直接頼んでみよう。
「ん、護……………………」
「なんですか?」
「私は……、着てない、よ……?」
「え……………………」
なんてことだ。残念。
(ていうか)
なんでバレてるし。
「あはは。残念だね、護。全員が着たわけではないのさ」
「そうでしたか……………………」
悲しい。物があるなら見たかった……。