再び #4
「あららー……、今日もいないのかな…………?」
「どうだろ……」
成美は今日も一番乗り。ただし、昨日とは違って、今日は渚と一緒。部室はまだ空いていなかった。
「私、鍵とってくるよ。お姉ちゃん」
「そう? 分かった。あたしはここで皆を待ってるね」
「うん」
職員室まで一緒に行くという選択肢はない。ここで待つ。閉まっていると、今日も集まらないのだと思って帰ってしまうメンバーがいるかもしれない。二日連続という風に思ってしまうのは成美だけではあるが。
(誰が次くるかなー)
ウロウロ。階段の前から部室の前までを行ったり来たり。ただの時間潰し。ただ座って待っているだけというのは、成美に合わない。
「あ、おーい、まも……」
階段を登ってくる護を見つけ、その上にいる成美は護の名前を呼ぼうとしたが、その名前を最後まで言えなかった。一番望んでいたのに。
(あらあら……)
一人だけじゃなかった。悠樹が横にいた。それも、手を繋いで。
「ん、成美……。おはよう」
「おはようございます」
「うん、おはよー。って、もう夕方だけどね」
平常心。平常心。
この程度のことで取り乱してはいけない。これは日常なのだ。悠樹はこうなのだ。だから、悠樹に対して何かを言ったとしても、悠樹はそれをやめることはしない。簡単に出来て羨ましいと思うが、それは成美も同じだ。手を繋ぐなどといった行為に対して、羞恥心はない。むしろ、求めている。行動を。護を。
「なんで、ここに?」
「渚に鍵取りにいってもらってるの」
「ん」
「今日も空いてなかったんですか」
「うんうん」
昼休みは教室で過ごしていたから分からないが、今は昨日と同じ。
「今日、も…………?」
「昨日誰も部室にこなかったんだよ? びっくりしちゃったよ」
「ん……。珍しい。護はなんでその事知ってるの……?」
「あぁ、成美が教室まで来たので、その時に」
「そう」
昨日のことを思い返せば、なくて良かったと少しは思う。
途中まで護と並んで歩いた。ただそれだけのことではあるが、皆が集まってくると、それすら出来なくなる。二人きりになれる時間は少なくなる。だから、二学期初日に、護と二人で過ごせたというのは嬉しいことなのだ。時間は短かったが、必要なもの。
想いを強くするために。
「お姉ちゃん、鍵、持ってきたよ!」
渚が戻ってくる。階段の所で立って話す必要はもうない。部室に入ってゆっくりしよう。
全員が集まるまで。