再び #2
いつも通りの時間に悠樹は登校し、すぐに教室に向かう。護と会うのは昼休みでもいいし、放課後部室でも問題はない。
悠樹と護の関係性は確かなものだが、毎回毎回教室にお邪魔するわけにもいかない。護には護の時間があるし、クラスメイトとの関わりもある。葵、薫、心愛も同様に。今はもう、そこまでして自分を主張する必要はない。
「悠樹……………………ちゃんっ!」
制服の裾が控えめに引っ張られる。振り向かなくても、誰がやったのかすぐ分かる。
「麻依ちゃん」
「おは、よう。悠樹ちゃん」
「ん」
入口で立っていると邪魔になるから、すぐ教室内に入る。麻依は何か言いたそうにしたいたから廊下でと一瞬思ったが、ホームルーム開始までそれほど時間があるわけではない。教室で話して他に人に聞かれて困る話なんて二人の間にはないし、声の小さい二人の会話にわざわざ聞き耳立ててくる人もいない。
「悠樹ちゃん」
「…………?」
「昨日……、どうしたの………………?」
「ん……………………。ちょっと、しんどかった……」
「大丈夫……? メールしたのに返信なかったから…………」
「ごめん………………。もう、大丈夫」
メールや電話など、来ていたことは知っている。だけど、昨日の悠樹には、それに返信する元気がなかった。
本当のことは言わない。言えない。友達であれば、親友であれば隠し事はしたくない。でも、これは悠樹の問題である。高坂家の問題である。親友を、麻依を巻き込むわけにはいかないし、これ以上それを理由に心配をかけるわけにもいかない。
「大丈夫なら良かった」
「ありがと」
「悠樹ちゃんいないと……、私さみしいんだよ……………………?」
「ん、私も、だよ。麻依ちゃんとお話したかった」
「うん」
(…………)
こうして気にかけてくれる仲間がいる。それはとてもありがたいことだ。ここだけは平穏を保つことが出来る。いつも自分でいることが出来る。あの女の侵食を許すわけにはいかない。
「放課後、青春部……、行くよね?」
「ん。当然」
夏休みなりともかく、二学期はもう始まっているのだ。二日も行かないなんて、二日も護に会えないなんて耐えられない。
(必ず)
「分かった。お昼は、一緒に食べよ……?」
「ん」
会話が終わるのを待っていたかのように、ホームルーム開始のチャイムがなり、先生が教室に入ってくる。
「また後で」
「……ん」