再び #1
「ゆぅ姉、先行ってるね」
「ん」
日直の仕事があるらしく、時雨と氷雨の二人は先に学校に向かってしまった。先にと言っても、中学と高校だ。いくら同じ敷地内にあるといえども、普通の学校生活の中では、会う機会はほとんどないといってもいいだろう。
扉が閉められ鍵が掛けられる音がする。
「……………………」
まだ時間はある。早めに教室に行ったとしてもしばらく一人になってしまう。家にいても同じ。なら、いつもと同じ時間に学校に向かえばいい。
(護は…………)
会いたい。一週間くらい会ってないだろうか。昨日学校をサボってしまったから、より会いたいという感情が湧いてくる。
(はやくしないと……)
二人の関係性ははっきりとしたもので、間を割って入ってこれるものは当然いない。だとしても、慢心はいけないし、やるべきことがある。
制服に着替えてリビングへ。出発の時間がズレていたから、自分のご飯は自分で。高坂家ではそういうルールになっている。
(パン、パン………………)
目玉焼きでも作ろうかと思ったが、やめておく。食パンにしよう。時間はあるものの、それでも三十分程度。全ての時間を朝食に費やすわけにはいかないし、悠樹はそれほど食べない。食パン一枚で十分である。
お腹が減っているわけではないし、食べたくないという気持ちもあるが、それでは時雨と氷雨に怒られてしまう。それに、食べないと元気もでない。何も朝から良いものを食べる必要はない。満たせばいい。昼までもたせればいいだけだ。
「ん……………………」
焼き立ての食パンの香りが、朝食が出来上がったということを知らせてくれる。
トースターから食器にパンを移し、その足で冷蔵庫へ。ジャムかバターか。ジャム、イチゴジャムにしよう。
静かな朝食な時間。一人だし、テレビもつけていないのだから、当然といえば当然だ。聞こえる音は悠樹の咀嚼音のみだ。
「ん…………っ」
朝ご飯といえども、一人でというのは久しぶりのことだ。夏休みがあったのだからそれもそうだが。基本的には揃う。
十分くらいで、イチゴジャムをたくさん塗ったパンを食べ終わる。後は、歯磨きをし、鞄に荷物を入れるだけ。思ったより時間が余ってしまった。