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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第一編〜二章〜
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探索#3

 視線を感じる。


 その視線は俺を見ているのか悠樹をみているのか、はたまた俺たち二人を見ているのかは分からない。


 最初俺たちを見ているのは杏先輩かとも思ったが、杏先輩は俺たちがこれから向かう先で待っているはずだ。それに、その視線は前方からではなく後方や左右からその視線は飛んでくる。


 「先輩。気づいていますか?」

 「うん。でもこれは護を見てる」

 「俺ですか?」

 「心当たりは?」

 「無いことは無いんですが…………」


 完全にないわけではない。中学時代の友人の中にそういうことをするの人がいた。しかし、その娘は中学の終わりに引越しをしたはずであり、ここにいるとは思えない。


 「なら、確かめてみる?」

 「はい。少し気になりますし……」


 俺たちはその視線の元に近づく。相手は自分が隠れていると思っている服を見るのにせいを注いでいるらしく俺たちが近づいていることに気づいていないらしい。


 俺はその娘の背後に回り声をかける。


 「咲」

 「へ? あっ! わっ! 護!?」

 「咲。お前、こんなところで何やってんの?」

 「あ、あたしは別に…………、護こそ何やってるのよ?」

 「俺は部活の集まりでここに来ているだけだ」


 少しテンパッている。


 「そうなんだ。隣にいるのは?」


 紹介しないと。


 「あぁ。部活の先輩の高坂悠樹先輩」

 「どうも」


 悠樹は咲に礼をする。


 「あ、どうもです」

 「引っ越したって聞いてたから、こんなところで会うとは思ってなかったよ」

 「引っ越したって言ってもここの近くに引っ越しただけだったんだけどね」

 「マジか。てっきり遠くに行ったと思ってた」

 「あたしに会えて嬉しい?」

 「まぁ、そうだな。咲のその癖も変わってなかったし」

 「あたしの癖?」

 「うん。後ろからか左右から人を見ようとする癖」

 「べ、別にそれは癖っていうわけでは無いんだけどね」

 「じゃなんなんだよ」

 「まぁ、気にしなくていいじゃん」

 「まぁ、そう言うなら気にしないけどさ」


 少し腑に落ちないけど…………。


 「護。そろそろ行かないと杏先輩が待ってる」


 悠樹は俺の服の裾を引っ張る。


 「そうですね」

 「何か用があるの?」


 咲が尋ねてくる。


 「まぁね。部長が待ってる」

 「なるほどね…………」


 咲は少し考える素振りを見せ。


 「そこにあたしも付いて行っていい?」

 「別にいいとは思うけど」

 「やったっ! じゃ早く行こうよ」



 歩き出して数秒後、咲が口を開いた。


 「でさ、さっきから気になってたことが一つあるんだけど」

 「なんだ? 」

 「護と悠樹さんは付き合ってるの?」


 吹き出しそうだったが、なんとかこらえる。


 「いや、付き合ってないが」

 「じゃ、なんで手を繋いでるのさ」

 「まぁ、このことには色々あんだよ」

 「ふーん」


 悠樹の隣を歩いていた、咲は数歩前に出たかと思うと俺の横に並び、俺の腕に寄りかかってきた。


 「お、おい………………っ! 咲………………!?」

 「良いじゃんか。悠樹さんとも手を繋いでるんだし」

 「そういう問題じゃないよ。歩きにくいし」

 「まぁ、あたしも歩きにくいし、手を繋いでくれれば許してあげる」


 そう言いつつ咲は俺の手を勝手に取る。


 「許してあげるって何をだよ」

 「何って、護があたしの告白を断ったことだよ」


 あぁ、と俺は咲との出逢いを思い出してみる。


 俺と薫は昔からの付き合いで仲は良かった。その中に入ってきたのが咲だった。中学一年と二年の時薫と同じクラスで、二年の時に同じ部活の友達として咲を紹介されたのだった。


 俺と薫、咲と三人と一緒にいることが多くなったのはその頃からだった。


 「俺だって、告白されたの始めてだったし…………」

 「あたしも告白したの初めてだった。でもあたしも頑張ったんだよ?」


 俺はその日へと記憶を戻した。



 中学三年の最後の日、中学三年間の思い出を胸に、高校生活への思いを馳せるそんな日。云はく、卒業式である。


 「ゴメンね。護。まだ咲も来てないことだしあの子達と写真撮ってくるね」

 「おぅ。分かった」


 薫が遠くに行ってから薫に聞こえないように俺はため息をつく。


 「はぁ、暇だな」


 そう思うのなら、俺も薫に付いて行ったら良かったのかもしれない。


 けど、女子の集団の中に入っていくことは普通出来ないだろう。


 そしてもしこの時の声を羚に聞かれていたのなら「お前何言ってんだ? 友達多いだろう」とドヤされるかもしれない。


 しかし実際この時、友達と呼べるものは多くいたのかもしれないが親友と呼べるものは咲との薫の二人しかいなかった。加えて、その友達も男子より女子の方が多くいた。


 「咲………………来ないかな」


 俺は木陰に座りボソッと呟いてみる。


 「呼んだ?」

 「わぁっ!!」


 上方から声をかけられ見上げるとそこには咲がいた。


 「咲、そんなとこで何やってんだよ」

 「何ってわけではないけど、気持ち良いよ。風が吹いて」


 その咲の言葉に応えるかのように風が吹く。そうすると自然にスカートが風に靡くわけで。


 「あ、危ないから。早く降りろよ」


 俺は慌てて目をそらす。スカートの中身が見えてしまったからだ。柄と色は……ご想像にお任せしよう。


 「護。見た?」

 「悪い…………」

 「良いよ。別に。あたしは気にしないし、見られても減るもんじゃないからね」

 「そういう問題じゃないだろ」

 「まぁね。そこのけて。そこ着地点だから」


 咲は、俺の丁度座ってる場所の少し前を指す。


 「了解」


 俺は立ち上がり咲から目線を外すようにその場から離れる。


 なぜ咲から目線を外したかって?


 それは着地の衝撃で色々と見えてしまうかもしれないからだ。


 咲が飛び降りるのにつれて咲を中心にして起きた風が俺の方まで吹き抜ける。


 「で、何か俺に言いたいことがあるんじゃないの?」

 「バレてた?」

 「当たり前だ。何年一緒にいると思ってんだ」

 「そうだよね」


 すぅ……はぁ……と、咲は深呼吸をする。


 「あたし実はさ、今日引っ越すんだ」


 衝撃だった。


 「マジかよ!? 何でもっと早くに言ってくれなかったんだよ」

 「ゴメン。護にはなかなか言いにくくて」

 「俺にはって……。薫には言ったのか?」

 「昨日にね」

 「もう一つ話があるんだ」


 咲はもう一回深呼吸を重ねる。


 「護はさ……………………、好きな人とかいるの?」

 「いるといえばいるのかもしれない」


 咲との薫。二人とも同じくらい好きだとは言えない。


 「はっきりしないんだね」

 「そういう咲。お前はどうなんだよ」

 「あたしはいるよ。あたしはアンタが護が好きっ!」

 「…………っ!」


 突然の咲の言葉に俺の処理速度は追いつけなかった。


 「二年の時、薫に紹介された時から少し気になってた。その時は授業の移動も三人一緒だったし言うチャンスはなかった。

三年になってまたクラスが一緒になった時は良かったと思ったし、薫とクラスが離れたのは少し残念だったけど、これで学校にいられる時は薫より一緒にいられると思った」


 咲はすぐに言葉を続ける。


 「席もずっと近かったしそれも護のことをもっと好きになった理由かな。本当はもっと早くに護にこの思いを伝えるはずだったんだけど。休み時間にはあたしのところに必ず薫が来るし、他の女の子達も護の元に集まってくる。それは護が優しくて頼り甲斐があるっていうのもあたしが護のことを好きになった所」

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