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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第二編〜五章〜悠樹√〜
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不信感 #2


 「あ…………」


 (おっと…………)


 氷雨を見送り、時雨はすぐに家に戻る。扉を開けようとしたが鍵がかかっており、思わずつんのめってしまう。悠樹がいるから開いてると思っていたが、氷雨はちゃんと戸締りをしていたようだ。


 (そう、だね……)


 マンションであるし、階も高い。基本的にはそういった心配はする必要はないが。今は必要である。悠樹の為にも。


 「ゆぅ姉……っ! ただいま!」


 帰ってきたよ、と。知らせる。


 リビングの電気がついている。氷雨が付けたまま買い物に行ってしまったからだろうか。


 もしくは。


 「おかえり……………………。しぃ」


 ちょこんと、おとなしく、小さく。悠樹はソファの上に座っている。普段からそうだ。堂々としているわけではない。少し安心できる。時雨はそう思った。


 「部屋……………………、戻らないの?」

 「ん。ここで、いい……………………」

 「でも……」

 「大、丈夫……」


 テレビもついていない。ラジオもなにも。光だけが。


 「分かった。私もここにいる」

 「しぃは……、部屋にいていいよ。ここじゃなくても…………」

 「ううん。ゆぅ姉の隣にいる」

 「ん…………………………」


 いつも通りといえば、いつも通りだ。でも、違う。


 (うん)


 おとなしい。時雨は悠樹の状態をそう表現した。


 それは何も間違っていない。しかし、それにだって限度がある。こちらから話しかけたり何かアクションを起こせば返してくれる。でも、それだけなのだ。悠樹から動くことはない。


 (護さんがいれば……、違うのかな………………?)


 あの女が来てからも、護に会いに行く時の、青春部に行く時の悠樹は元気だった。無理をしている。そうは思わない。ちゃんと、護に相応しい悠樹を演じている。護に心配されることがないように振舞っている。時雨はその場にはいなかったが、そうであることは容易に想像出来る。


 今の時雨に、時雨と氷雨に何ができるか。隣にいるだけだ。邪魔をさせるわけにはいかない。自分達が悠樹の盾に。


 「あ、ゆぅ姉、今日学校行ったの……?」

 「いって、ない」

 「そっかぁ……」

 「明日は……、考える…………」

 「行ったほうがいいよ」


 普通は、行かなければいけない。護にも会えるのだから。あそこには、味方がたくさんいる。もちろん、時雨と氷雨だけではない。護だけでもない。


 「ん……」

 「ゆぅ姉…………?」


 悠樹が身体を預けてくる。肩に、ゆっくりと。悠樹の重さ、想いを感じる。


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