二学期っ! #4
「さてと……………………」
「ホームルームで案を出す前に少し固めたいのですが」
「そうよねぇ……」
「難しいわね」
先生からは何をしてもいいと言われている。学校、来る人に対して迷惑をかけなければ、常識の範囲内であればなにをしてもいい。そう言われると逆に難しい。
文化祭だ。高校生活は三年あるが、このメンバーで、このクラスで出来るのはたった一回だけだ。特別なものにしたい。そう思っているのはもちろん、俺だけではないはずだ。葵だって薫だって心愛だって。クラスメイト全員が思っているだろう。
「皆は何したい?」
「んー……………………」
「難しい質問だねぇ」
「……………………そうね……」
まぁ、こういう答えが返ってくるのは分かっていた。俺だって、自分の質問に対する明確な答えは持ち合わせていない。
何がしたい。自分がしたいこと、やりたいことを考えればいいだけなのに、上手くまとまらない。
「簡単なものがいいよね」
「簡単、ですか……?」
「うん。あたしはそう思う。薫はどう?」
「わいわいできたら問題ないと思うんだよね。簡単でも難しくても」
「それはそうですね」
「そっかー……」
薫の言う通り。楽しむことが出来れば。それだけで十分だ。葵もそれに頷いている。
「簡単な企画がいいのか? 心愛は」
「んー、なんで言ったらいいのかな。あたし達まだ一年だし、レベルが高いやつは難しいかなって」
「まぁ、それもそうだなぁ」
高いというか、心愛が言おうとしていることは分かる。まだ一年。慣れていない。二学期になったばかりで、クラスメイト同士の関係性も強くはない。
「そうかなぁ?」
「目標は高くしておきましょう」
「それもそうね」
一致団結。信頼関係。まぁ、そういったものはこの文化祭で作っていけばいい。体育祭だってある。今この段階では出来てないが、この先、それを作れる機会はある。
「そうだな」
目標は高く。葵の言葉に納得する。低いハードルは設定すべきではない。案を出す前段階だ。何も深く考える必要はない。
「火気厳禁……、ではないわよね? 教室って」
「まぁ、そうだな。禁止はされてないぞ」
業者の方から点検があるらしく、配慮はきちんとされている。それでも俺らが把握して、事故のないようにしなければならない。危険だと判断されれば学校に案を提出する段階で却下される。無駄な時間を作らないようにする必要がある。
「案何個くらいに絞る?」
「他の人からもホームルームの時に聞くから、こっちから提示するのは五つもあれば十分じゃない? あたしはそう思うけど」
「心愛にさんせー」
「はい。私も問題ないと思います」
最低、一人一つずつ。




