在り処 #8
「ただいまー」
護と沙耶と別れ、自分の家へ。母がすぐに迎えにきてくれる。
「おかえり。言ってくれれば車だしたのに」
「いいよいいよ」
葵達との用事があった。その選択肢は頭に浮かばなかった。
(まぁ)
結果としてあの公園に繋がった。何か進展があったわけではないが、気持ちを強くすることは出来た。落ち込んでいる場合ではない。
前に。
前へ。
「荷物、先に片付けておいてね」
「はーい」
〇
「はー。やっと帰ってきたな」
「そうですね。少し疲れました」
「そうだな」
杏を家まで送り自分達の家に戻る。佳奈の親は年に数回しか帰ってこないので、出迎えてくれる人はいない。無人。むしろ、毎日出迎えをしてきたのは咲夜の方。これだけの間家を空けたのは本当に久しぶりのことである。
「荷物は私がやる。咲夜は部屋に戻っていいよ」
「いえいえ。お嬢様。そういうわけには…………」
これは自分の仕事だ。わざわざ佳奈がやることではない。
「大丈夫だ。問題ない」
「ですが………………」
「咲夜だって疲れているし、たまには私が、な」
「……………………なら」
疲れている、というのは正しい。少々はしゃぎすぎたところはある。動く、ということは日々していることだが、旅行の間のそれとは少し違う。楽しさがあるしそこから元気がもらえるが。
「お言葉に甘えさせてもらいます」
「うん」
キャリーバッグを佳奈にたくす。
「あ、咲夜」
「はい。どうしましたか?」
「後で部屋に行ってもいい?」
「分かりました。問題ないですよ」
断わる理由はどこにもない。当然だ。
「分かった。片付けが終わったらすぐ行く」
「はい。待ってます」
一例をし、咲夜は自分の部屋に向かう。
「あぁ、掃除をしないといけませんね……………………」
無人であったということは、もちろんその間誰も掃除をしていないということ。掃除はもう咲夜の日課になっていた。家から離れすぎた分、余計に埃などが気になってしまう。
「今は……ダメですね。後にしましょう」
今すぐにでもしたいが、そうしたら佳奈に怒られる。
「ふぅ……………………。はぁぁ」
(流石に少し疲れました)
立場を考え、羽目を外しすぎないように自分自身にセーブをかけていたつもりだったが、あまり機能しなかったようだ。あのメンバーだ。仕方ない。
(眠くなってきました……)
上着を脱ぎ、身体のストレッチを。
「ん、することがないですね……」
普段やっていることを佳奈に取られてしまっているので、本当にすることがない。
(どうしましょうか)