表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第二編〜五章〜悠樹√〜
303/384

在り処 #7



 「いつまでここにいるの?」

 「分からん」


 薫にそう聞かれるが、俺は知らない。逆に知りたい。俺をここに連れてきたのは姉ちゃんだ。


 「だそうだけど? 姉ちゃん」

 「そうだねぇ……………………」


 公園に出てきてまだ三十分ほど。時間はあまり経っていない。することがないから、もっといるように感じる。


 「もういいのかなぁ……」


 携帯をチラチラ。


 「よしっ。帰ろうか」

 「ということだ」

 「うん」


 時折風が吹いて暑さを和らげてくれるが、いつまでも持つわけじゃない。太陽の暑さには叶わない。



 (どうかなぁ……)


 こうして公園で時間を潰していたわけだが、いってしまえば問題があったわけではない。


 (知らない)


 護は何も知らない。リビングに入れなければいいだけ。話に混ぜなければいいだけ。それだけ。だけど、沙耶は護を家から連れ出した。


 そしてそれは。


 (薫も、ね)


 護の横を歩いている薫も同じこと。


 何も知らないままでいい。少しでも耳に入ることを避けた。護に悪影響を及ぼす可能性があり、少なくとも数名との関係性が壊れるかもしれないからだ。起きてはならない。防がなくてはいけない。


 


 姉として、応援はする。自分の意思に反して。



 (もうすぐだ)


 二人があそこで何をしていたのか分からずじまい。薫に関係のないことといえばそうだし、護も詳しくは知らないようだった。それに加え、沙耶の表情にもいつもの明るさはなかった。薫が首を突っ込むことではない。おとなしく。


 「旅行はたのしかった?」

 「あ……、はいっ」

 「良かった良かった」


 突然の問いかけに、ワンテンポ遅れてしまう。


 「二回目になっちゃうけど、今年も皆で行こうね」

 「中旬くらいだよな?」

 「うん、そうなるね」


 そう。こっちもある。小学校くらいからだろうか。家族合同での旅行は、毎年の恒例行事だ。来年も、再来年も。ずっとある。


 旅行は何度でも行きたい。その度に前に進むことができる。それに、今度は邪魔が入らない。自分達だけなのだから。青春部のほかのメンバーが入る余地はない。


 (はぁ……)


 そうじゃない。ダメだ。


 立場の優位性はもうなくなっている。理解しているつもりだ。でもやはり、まだ少しは、と思ってしまう。それは諦めていない証拠。


 諦められるわけがない。葵達と話して、より思いは強くなった。ずっと昔から好きだったのだ。負けたくない。


 「ねぇ、護」

 「なんだ?」


 (ふぅ……………………)


 「やっぱりいい。なんでもない」


 時間だ。家が見えてきた。先のことはまた後でいい。


 


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ