在り処 #7
「いつまでここにいるの?」
「分からん」
薫にそう聞かれるが、俺は知らない。逆に知りたい。俺をここに連れてきたのは姉ちゃんだ。
「だそうだけど? 姉ちゃん」
「そうだねぇ……………………」
公園に出てきてまだ三十分ほど。時間はあまり経っていない。することがないから、もっといるように感じる。
「もういいのかなぁ……」
携帯をチラチラ。
「よしっ。帰ろうか」
「ということだ」
「うん」
時折風が吹いて暑さを和らげてくれるが、いつまでも持つわけじゃない。太陽の暑さには叶わない。
〇
(どうかなぁ……)
こうして公園で時間を潰していたわけだが、いってしまえば問題があったわけではない。
(知らない)
護は何も知らない。リビングに入れなければいいだけ。話に混ぜなければいいだけ。それだけ。だけど、沙耶は護を家から連れ出した。
そしてそれは。
(薫も、ね)
護の横を歩いている薫も同じこと。
何も知らないままでいい。少しでも耳に入ることを避けた。護に悪影響を及ぼす可能性があり、少なくとも数名との関係性が壊れるかもしれないからだ。起きてはならない。防がなくてはいけない。
姉として、応援はする。自分の意思に反して。
〇
(もうすぐだ)
二人があそこで何をしていたのか分からずじまい。薫に関係のないことといえばそうだし、護も詳しくは知らないようだった。それに加え、沙耶の表情にもいつもの明るさはなかった。薫が首を突っ込むことではない。おとなしく。
「旅行はたのしかった?」
「あ……、はいっ」
「良かった良かった」
突然の問いかけに、ワンテンポ遅れてしまう。
「二回目になっちゃうけど、今年も皆で行こうね」
「中旬くらいだよな?」
「うん、そうなるね」
そう。こっちもある。小学校くらいからだろうか。家族合同での旅行は、毎年の恒例行事だ。来年も、再来年も。ずっとある。
旅行は何度でも行きたい。その度に前に進むことができる。それに、今度は邪魔が入らない。自分達だけなのだから。青春部のほかのメンバーが入る余地はない。
(はぁ……)
そうじゃない。ダメだ。
立場の優位性はもうなくなっている。理解しているつもりだ。でもやはり、まだ少しは、と思ってしまう。それは諦めていない証拠。
諦められるわけがない。葵達と話して、より思いは強くなった。ずっと昔から好きだったのだ。負けたくない。
「ねぇ、護」
「なんだ?」
(ふぅ……………………)
「やっぱりいい。なんでもない」
時間だ。家が見えてきた。先のことはまた後でいい。