在り処 #6
「あ…………………………」
護がいる。沙耶がいる。なんとなく足を運んだその公園で、二人を見つけてしまった。
(……)
しまった、という言い方は妥当ではない。家はすぐそこであるし、奇遇でもない。だが、二人だけで外にいるというのは少し珍しい。幼稚園や小学校の頃なら頻繁に見ていたものだったが、今ではそうではない。
二人のところへ。自然と身体が動く。
「やーやー、薫」
「おっす」
「暑くないですか、こんなところにいたら……」
薫は今すぐにでも家に帰りたい。
「まぁ、ちょっとねー……」
見る限り、何かをしているという雰囲気ではない。誰かを待っている、ということでもないだろう。
(まぁ、いいか)
「隣、いいでしょ?」
腰をおろす。もちろん護の横だ。
帰りたい。荷物の片付けもしないといけない。でも、裏を返せば、やらないといけないのはそれだけ。後回しにすればよい。
(今は)
護の隣にいたい気分なのだ。
いつもより気持ちが高ぶっている。それは二人のせい。心愛と葵のせい。
(何が一番良いのかな)
昔から知っている。幼稚園の頃の護。小学生の頃の護。中学生の頃の護。自分だけが知っていること。他の皆は知らない。
それなのに、護に対して何が一番効果があるのか分からない。
(無駄ではないんだけどね…………)
これまでの付き合い。ある一定の優位性はあるが、それは間違いない。だけど、それだけでは勝てない。実際、勝てていない。
(ずっとずっと)
護の隣にいることができる。ずっと一緒にいることができる。一番護のことを知っている。
(それなのに)
この有様である。
辛い。悲しい。
○
「変わらないねー。薫は」
「………………?」
薫が選んだのは、沙耶の横ではなく護。ぴったりと。
自分が家にいなかった間も、二人の関係性は変わっていない。
しかし、それではダメなのだろう。昔のままの関係性ではいけなかったのだろう。
告白をし、護がその答えを保留している。護は優柔不断だ。肝心な時にそうなる。姉である沙耶が一番知っている。だとしても、本当に薫のことを思っているのなら、護は一回で了承するはず。
告白の話は知っている。葵や心愛より後に告白したことも。
それでも。それでも、だ。
おかしな話である。