在り処 #4
久しぶりに一人で帰る。いつも隣にいる薫は、心愛と葵にとられている。カーテンの隙間から薫家のリビングが見えるが、家にも誰もいないようだ。電気が消えているし、気配がない。
「ただい……………………ま?」
(んん?)
沙耶の靴があるのは当然として、母と父も家にいるようで。この時間に帰ってきているとは。珍しい。加えてもう一つ、知らない靴が一足ある。来客だろう。
「あー、まもるー」
「ただいま」
姉ちゃんが顔だけひょっこりだし、俺を出迎えてくれる。
「んー……………………。おつかれかなー? 護は」
「どういうことだ?」
「ちょっと外いこ?」
「え……」
今帰ってきたばかり。暑いし、シャワーを浴びて汗も流したい。これからというのは少々だるい。
「おねがい、護」
「わかった。とりあえず荷物は置いていいだろ?」
「うん」
部屋に荷物を置き、すぐに玄関へ。姉ちゃんはもう、外に出ようとしていた。
「ごめんね。護」
「いやいいけど……。なんかあるのか?」
「まぁ…………、あるのはあるかなぁ……………………」
歯切れが悪い。
「それはおいおいってことで」
今は言えない、ということなのだろう。察しはつく。父がいて、姉ちゃんは逃げるようにして俺を連れ出した。
なにがあったのか、それは分からない。母がいて、父がいて、そして知らない人がリビングに集まっていた。俺はそこに混ざれない。混ざっちゃいけない。
〇
(どうしようかな……)
タイミングが悪い。そのせいで、こういう風に護を連れ出してしまった。
明らかに不自然だった。
(助かるよ。護)
なのにも関わらず、護は言うことを聞いてくれた。従ってくれる。
もちろん、その護の対応は正しい。例え護に断られたとしても無理矢理外に連れ出していたが。
「公園、いこっか」
時間を潰せるのならどこでもいい。隣の家が一番良いわけだが、誰もいないことは確認済み。合鍵等といったものは持っていないし、それに、無断ではいけない。
「姉ちゃん」
「なにかな」
隣ではなく後ろを歩いている護。歩くスピードを落とし、沙耶は護に並ぶ。
「やっぱりいいや」
「おっけー」
言わないといけない。理解している。でも、いつ言えばいいのか。
(はぁ………………)
護は何も知らない。だから、どこまで護に伝えればいいのか。それが分からない。
護の邪魔はしたくない。
「いやー、それにしても本当にあついねー」
さっきまでクーラーの効いた部屋にいたというのもあるが、数分歩いただけで汗がたれてくる。
来客が帰っていることが最低条件ではあるが。
(帰ったらお風呂に入らないと)




