葵の告白
屋上に行ってみるとそこには俺を待っている(?)と思われる少女がいた。
その後ろ姿を見、俺は一瞬で誰だか分かった。
クラス委員長の御上葵。
俺もクラス委員長をしているから、仲が良いといえばそう言えるのかもしれない。
俺はその後ろ姿に声をかける。
「委員長さーん」
「ひゃっう!」
委員長さんは突然のことにびっくりしたようで。
「なんだぁ…………。宮永君か。もぅ、びっくりさせないでくださいよ」
「ゴメン。で、委員長さん。俺を呼んだのは委員長さんで良いんだよね? 」
俺は一応確認をとる。とる必要は無かったのかもしれないけど。念のため。
「う、うん。そうですよ」
委員長さんはモジモジしながらそう答える。
「教室では話しにくいこととか? 」
適当に話を繋げる。だいたいの想像はつく。
「ま、まぁそんなところ 」
委員長さんは一旦深呼吸をし、何かを決心したようで。
「宮永君は……………………、か、彼女とか……、いますか……………………?」
「いないよ。まだ高校生活始まったばかりだし、急ぐことは無いと思ってる」
これは俺の正直な思いだった。
「そうですか。好きな人……?」
「いない…………よ? なんで?」
少しばかり答えに詰まってしまう。
委員長さんは、俺と薫の仲の良さを知っている。だけど、それだけなのだ。中学時代の時のあのことを、委員長さんは知らない。
「あ、あの。私ね実はね………………。宮永君のことが……、好きなの!!」
委員長さんは顔を真っ赤にし言う。
(……………………??)
ん?
委員長さん。好きって言った?
俺のことが?
「委員長さん。もう一回言ってもらっていいかな? 」
「へぇ? もう一回? 私は宮永君が、いや……………………護君のことが好きなんです」
どうやら俺の聞き間違いでは無かったらしい。
委員長さんはそれなりに可愛いし、好きか嫌いかと言えばそりゃ好きである。羚の情報によるとクラス男子の人気も高い。
しかし。
「委員長さん。本当に俺のことが好きなの?」
「その呼び方。止めて欲しいです」
そう言われて気づく。そう言えばずっと委員長さんと呼んでいた。
「じゃ、御上さん」
「葵って呼んで欲しい」
(やっぱり)
それはかなり恥ずかしいお願いであったが、委員長、いや葵を見るとそんな気持ちも無くなった。
「葵は本当に俺のこと好きなの? 」
「はいっ! 」
葵は笑顔で答える。
「けど、俺達あんまりお互いのこと知らないよね 」
葵の顔が少し曇る。
「いや、俺は葵のこと嫌いじゃないからそこは安心して。だからこそ友達から始めないか?」
俺はそう提案した。どう対応すればいいのか分からない。慣れていない。友達。まず、そこからだ。その土俵に立たなければ葵のことを知ることが出来ない。
「はい! あ…………」
「どうした?」
葵は自分の鞄から携帯を取り出し言う。
「メアド、教えてもらっていいですか?」
「良いよ」
俺も携帯を取り出す。断る理由もないから。
「準備できたよ」
「あっ、はい。こっちも準備できました」
と彼女は携帯をこちらに向けてくる。アドレスのやり取りが完了する。
「ありがとうございます! 」
「こちらこそ。ゴメンねすぐ返事出来なくて」
俺がそう言うと葵は。
「気にしないでください。私だってそんなにすぐ返事もらえるとは思っていませんでしたから。それでは、失礼します」
そう言うと、葵は軽やかなステップで屋上から帰っていった。