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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第二編〜五章〜悠樹√〜
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在り処 #2

 「悠樹……………………」

 「………………………………」


 抑えられなかった。この気持ちを抑えることは不可能。邪魔をしないでほしい。心の底からそう思う。


 その気持ちが強く、強く。


 「ゆぅ姉……………………っ」


 時雨が頭を撫でてくれる。何も言わずとも。


 落ち着く。落ち着かなければならない。いつまでもこの状態ではいられないし、姉としていけないことだ。


 (なんでなんでなんでなんで)


 今更何をしに来たのか。悠樹には理解できない。


 「…………話をさせてほしいの……。ね……?」

 「帰ってくれませんか」


 時雨でもない。悠樹でもない。


 「ひぃ姉」


 ロビーで待っているはずの氷雨が、肩を大きく上下させ、今、悠樹と時雨の間に割って入っている。


 「ひぃ姉の……、言う通り……………………です……」

 

 時雨も、氷雨の後に続く。


 深呼吸。悠樹は気持ちを鎮めることに専念する。


 姿を見るだけで怒りがこみ上げてくる。それは当然、時雨と氷雨の二人もだ。悠樹だけではない。


 「……………………仕方ないわね……」



 ため息はつかない。反感を買うから。言ってしまえばここにこうしていること自体、目の前にいる三人を怒らせる理由になっているわけだが。


 「帰ってくれませんか」


 氷雨、時雨、そして、悠樹。強烈な言葉が返ってくる。こうなるとは想定の範囲内ではあるが、辛いものがある。この状況を作ったのは自分だ。


 全ては、自分の責任だ。分かっている。


 「分かったわ……………………」


 二人の要求を飲むしかない。



 「はぁ……はぁ…………………………」


 息を整え、睨みつける。苛立ち。一度逃げてしまった自分にも苛立つ。


 弱い。強くなったとそう思っていたが間違いだった。自分は弱いままだ。一人では何も出来ない。双子の妹である如くがいるから。姉である悠樹がいるから、自分はこうして発言出来ている。発言する権利を得ている。


 「三人に会えてよかったわ。また……、くるから」


 (…………………………っ)


 「やっと……」


 帰ってくれた。逃げた自分に言う資格がないことは理解している。


 でも、落ち着ける。


 邪魔者が一人消えたのだから。



 「大丈夫……………………? ゆぅ姉」

 「……………………ん」


 三人だけの空間に戻った。力が抜けて、その場に座り込む。


 「ひぃも」

 「……うん」


 タイミングが悪すぎる。


 「あの人……………………、また、って……」

 

 今日だけなら、今回だけのことであるなら、まだ切り替えることができた。でも、そうではない。いつ来るか分からない。


 (……っっ)


 「困ったなぁ……」

 「……………………うん」


 時雨の言葉に氷雨が頷く。


 癪に障る。


 来ないでほしい。


 悠樹は、時雨は、氷雨は。


 (私達は……)


 はっきりと、拒否を示した。拒絶した。それなのに、またくるとそう言った。


 自分達の行動は意味がなかった。そういうことなのだ。


 



 


 


 

 

 

 

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