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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第二編〜五章〜悠樹√〜
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在り処 #1


 「………………」


 時雨は何も喋らない。相手が口を開くのを待っているわけでもない。


 (ひぃ姉……)


 逃げてしまった。という表現は適切ではないが、間違ってはいない。今目の前にいる女性、それを見て、氷雨は家から出ていってしまった。時雨に、それを止めることは出来なかった。


 どういう対応をすればいいのか、時雨には分からない。その上、席を外すことも出来ない。氷雨に早く戻ってきて欲しいが、それは期待できないだろう。家族であり、双子の姉である。それくらいのことは理解しているつもりだ。


 (ゆぅ姉は……………………)


 

 何をしているのだろう。メールを送ったのだからもう時期戻ってくるころだろうが。


 (はやく……して……)


 待てない。耐えられない。この状況に時雨は慣れていない。


 「時雨……………………」


 自分の名前が呼ばれる。時雨は下に向けていた顔をとりあえず上げるが、相手に目を合わせはしない。


 反抗。


 「見てほしいな……私を…………」

 「い、いや…………………………です」


 拒否。


 「そんなこと言わずに……見せてよ……」

 「…………………………」


 反応しない。


 嫌だからだ。


 一体何をしにきたというのだろうか。連絡もせず、いきなり。



 悠樹は一人で戻る。氷雨をおいてけぼりにしてしまっているが、今の氷雨を連れて家に戻るわけにはいかない。まずは悠樹が。自分が。


 事を収拾させることが優先事項だ。


 (空いてる)


 鍵は締められていない。時雨の気も動転しているのだろう。


 「ん…………誰」


 靴が二足。時雨の分と、知らない人の靴。大人の靴だ。


 「いない……………………」


 自分達の部屋を開けてみたがそこにはいなかった。


 (いれないか)


 なら、あとはリビングしかない。


 (…………………………)


 深呼吸。深呼吸だ。


 落ち着いて。自分の立場を考える。悠樹がしっかりしないといけない。



 (あ…………………………っ!!)


 「ゆぅ姉!!!!!!!!」


 帰ってきた。やっとだ。悠樹が戻ってきた。今までぜんぜん気付かなかった。


 勢いよく身体を立ち上がらせ、時雨は悠樹の元に向かう。


 「ただいま、しぃ」

 「うんっ」


 思わず抱きついてしまったが、悠樹は受け止めてくれる。離しなどしない。


 「悠樹……。氷雨は一緒ではないのね」


 (……………………っ)


 「なに……いまさら」

 「……………………」


 悠樹の言葉に答えようとはしない。


 「分かってるのよ」

 「なに、を………………?」



 「三人に迷惑かけたな、って……」

 

 当然だ。言われなくても分かっている。


 悠樹が聞きたいのはそんなことではない。


 (どうでもいい)


 当時は考えたりしたが、今になってはもうどうでもいいことなのだ。こうして、三人で暮らしてきた。悠樹、氷雨、時雨の三人で。


 「こ…………な……で…………っっ」


 上手く声が出なかった。


 「なにかな?」


 (この…………っ)


 「私達の生活を壊さないでっっっっ!!!!!!!!」


 悠樹の感情が爆発した。

 


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