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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第二編〜五章〜悠樹√〜
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Suddenly #2


 (しかた……ない)


 護といたい。咲夜も、杏も、佳奈も、成美も、渚も、葵も、薫も、心愛も、護から離れている。簡単に独り占めできる。だが、悠樹は護を手放した。


 「ううっ……………………」


 渚は電柱に頭をぶつけてしまったようで、頭を抱えて涙目になっている。


 携帯を取り出し、メールを確認する。氷雨と時雨から。さざなみを出た時にもメールが来ていた。無視をしていたから、未読のメールが四件。それぞれ二つずつだ。


 (帰らなきゃ……)


 護を引き止めていた手を離し、護を自由にしてあげる。


 もったいない。折角の時間だというのに。


 自分は勝者である。だが、勝者であったとしても、護との時間を疎かにしていいわけではない。危険は常にある。そのことを忘れてはいけない。


 「おつかれ……。護」


 家に帰るまでが合宿だ。出来ることなら家に呼ぶなり行くなりしたかったが。


 (またこんど……)


 機会はある。


 ないはずがない。



 「ゆぅ姉……」

 「ただいま」


 マンションのロビー。そこで氷雨が待っていた。


 (どうして?)


 家で待っていればいい。わざわざロビーで待つ必要はどこにもない。


 「しぃは?」 

 「部屋」

 「…………家に、戻ろう……?」


 こんな所で重要な話なんて出来ない。出入りが多い時間なら尚更だ。


 「…………………………ちょっと……」

 「ひぃ?」


 悠樹の足が止まる。氷雨が手を握り、エレベーターに乗り込もうとした悠樹を引き止めたからだ。


 「……………………」

 「……………………?」

 「もどり……………………たくない…………………………」

 「なんで……………………?」


 怯えている。氷雨が。こんな氷雨を悠樹は見たことがない。ここ数年絶対に見ることがなかった表情だ。


 (何故……………………)


 何が理由なのか。メールには詳しいことは書かれていなかった。自分が合宿に行っている間に何かがあったことは明白であるが、それがなんなのか。教えてもらっていないので分からない。


 「…………っっ」

 「わかった。ひぃはここで待ってて」

 「ゆぅ姉……………………」

 「ん」


 一回、二回。氷雨の頭を撫でる。


 戻らないわけにはいかない。時雨がいるのだから。氷雨がこうであるのなら、時雨が大丈夫なわけがない。時雨は一人我慢していることになる。


 (いかないと)


 自分はお姉ちゃんだ。妹達が困っているのであれば、姉である悠樹が行動しなければならない。


 それが、姉としての、そして、家族としての努めだ。


 

 



 

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