最終日 #2
「じゃー、帰るよー」
荷物をまとめ、そしてチェックアウトを。これで、旅館さざなみとはお別れだ。出来ることなら、また来年も使ってみたい。杏はそう思った。青春部としてくるのであればそこに自分と佳奈はいないが、思うだけなら自由だ。
当然、ここだかの付き合いにはしたくない。青春部を辞めた後も、関わりを持っていたい。特に、護とは。
ただ、それは、杏が望んでいることだ。来年どうなっているかなんてことは、誰にも分からない。大学に進学する以上、敷地は一緒だとしても、今のようには会えない。辛い。
いつも通り、杏は先頭を行く。皆の前を歩く。杏の役目だ。
「お疲れ様です。杏様」
「あ、咲夜さん」
一緒にひっぱってくれた咲夜。相談にも乗ってくれた。咲夜がいなかったらどうなっていただろう。乗り越えられなかったかもしれない。楽しいだけではない。この旅行、合宿で、考えることも沢山あった。
「ありがとうございました」
真面目に。感謝の気持ちを述べる。嘘ではない。本当に、助けになった。
(頑張らないと…………………………)
〇
帰りも、もちろん咲夜さんの車で。三列目に座る。ここに来た時と同じだ。だが、隣には成美がいる。悠樹もいるわけだが、これが違う点だ。
「もう少し横に……………………」
「いや」
咲夜さんの運転は荒い。左右に揺れたりすると、隣にいる二人がこちらに寄ってくる。それでなくてもくっついている状態であるのに。
「成美も…………」
「いいでしょ。別に」
まぁ、分かっていることだ。言ったところで離れてくれるとは思っていない。
前にいる薫や心愛、それに葵がちらちらこちらを見てくる。
〇
(まぁ、仕方のないことですけど……)
また隣を取られてしまった。今度こそは、そう思っていた葵だったが、隣に護はいない。残念だ。帰るだけだで、それ以上でもそれ以下でもないが、少しは護のことを。旅行はこれで終わってしまうのだから。
「ねぇ、葵」
「なんですか? 心愛」
「後で話さない?」
(……………………?)
「それは帰ってすぐ、ですか?」
「うん」
「あたしもいいかな?」
すかさず薫が入ってくる。
「うん。どちらかというと三人の方がいいかな」
「何か、あるんですか?」
心愛がこう言うのはめずらしい。重要なことがある。そう考えてもいいだろう。
「んー、その時言う。それでいい?」
「あたしは問題ないよー」
「まぁ、はい」
〇
心愛は考える。自分達のことを。護のことを。
最初は隣にいる葵だけを誘うつもりでいたが、薫に言われ気付く。自分達は同じ同級生だ。クラスメイトだ。省くのは間違っている。三人で、三人だけで話さなければならない。
痕を残すわけにはいかない。
(最後にしないと………………ね)




