最終日 #1
「ん…………………………っ」
カーテンを開けたままにしていたからか、部屋に朝日が入り込んでくる。強烈。思わず目が覚めてしまう。
護がまだ寝ているのを確認し、成美はカーテンをしめにいく。朝だからしめる必要はないが、護のため。護を起こすのは成美の仕事だ。
「まだ六時なの」
特別早いというわけではない。こういう場所であるし、いつもよりはやくに目が覚めてしまう。疲れているはずなのに。
「まーもーるぅ」
ほっぺたを触る。ぷにぷにと。柔らかい。何度か味わったことのある感覚だ。二人きり。だからこそ出来ることだ。
「えへへ」
ちょっと前の、あのお泊まり会のことを思い出してみる。
勉強をしてからのお泊まり会。薫、心愛、葵、護が来てからの初めてのイベント。今では、こうして一緒の部屋にいる。一緒に旅行。青春部がこうなるとは、あまり思っていなかった。
青春部にいる理由が特にあったわけではない。ただのんびりと。学校が終わりすぐに家に帰るよりかは有意義な時間が過ごせると思ってたから、成美はずっと青春部にいた。そして一年後。大きく動いた。
「いやぁ」
何があるか分からない。本当に。青春部に飽きてやめていれば、今の成美はいない。護との付き合いもなかったことになる。
「それは嫌だなぁ」
居続けたからこそ、今がある。離したくない。離れたくない。だから、勝たなければならない。この恋の戦争に。
覚悟があるかと問われれば、成美はないと答える。だが、区切りは付けないといけない。ずっと思ってることだ。
起きてくる気配はまだない。
「ちょっとくらいなら……………………」
(いいよね?)
〇
(もう終わりですか………………………………)
咲夜はロビーに足を運ぶ。ここにいれるのもあと数時間。やることといえばチェックアウト、それだけだ。終わり次第、咲夜の車で御崎市に戻る。最後にどこか観光する可能性はあるが、それは杏が考えることであるし、咲夜はまだ何も聞かされていない。
(それにしても)
これだけ家を空けたのはいつ以来だろうか。三泊四日。咲夜の立場の問題もあるし、そういう機会があまりなかったことも、理由としてあげられる。
(楽しかったですよ。皆さん)
羽を伸ばすことが出来た。日々の疲れを癒すことが出来た。これも、佳奈が青春部にいるおかげだ。感謝してもしきれない。
「さてと……」
ソファから立上り、咲夜は大きく伸びをする。そろそろ皆が起きてくる頃だろう。
「帰ったら掃除をしないといけませんね」
やることがたまっている。この間、麻枝家には誰もいなかったのだから。