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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第一編〜二章〜
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久し振りの青春部

 約一週間ぶりに訪れた青春部には少しばかりに変化が見られた。


 新たに部屋の右側に長机が置かれ、その上には食器棚、ガスコンロが置かれていた。


 食器棚の中には恐らく人数分のコップとコースターなどが入っていることだろう。


 「これ、なんなんですか?」


 俺の質問に答えたのは杏先輩だった。


 「なにって食器棚とガスコンロだけど」

 「それは分かってますよ。俺はどうしてこの部室にこんなものがあるんですかと聞いているんです」

 「別にあってもいいじゃない」

 「そうかもしれませんけど…………、一体何に使うんですか?」

 「熱いお茶が飲みたくなった時とか」

 「これからの時期、そんなことを思うことは無いと思うんですが……」


 外も中も暑いのにわざわざそんな熱いものを飲みたくはない。


 「じゃ、おやつを食べて紅茶を飲みたくなった時に」

 「校内で食べて良かったでしたっけ? そもそも火気厳禁ですよ」

 「そんなことはバレなきゃ良いのよ」


 俺は、生徒会長こと佳奈先輩が隣にいるのにそんなことが言えるものだなぁと思った。


 案の定、テスト問題とその解答用紙を机の上に広げて見直しをしていた佳奈先輩も杏先輩の発言に気づいたようで。


 「杏。私がここにいるのを忘れてないか?」

 「そんなことないよ。佳奈は許してくれると思ってるだけ」

 「はぁ、私もお前を大目に見てきたはいるが、今回のはさすがに無理だ」

 「なんでよー」

 「さっき護も言っていただろう。ここは元々火気厳禁の部屋だ。それに先生の点検だって入る。そうした場合怒られるのは私と杏になるんだぞ」

 「それは嫌だけど…………そこをお願いっ!!」

 「私でも無理だ。別の物に変えるのなら掛け合ってはみるが……」

 「本当にっ!? ありがとっ!!」


 こうして、一件落着したような感じではあるものの活動内容とは関係のない(そもそも活動内容なんてあるのだろうか)食器棚を置いていいのか、校内でお菓子を食べていいのかと疑問は残るものの佳奈先輩はそんなことを気にもとめず、「どこまでやったか分からなくなったじゃないか」と杏先輩に対してぶつぶつと不満をもらしつつ机に向かっている。


 そんな佳奈先輩を尻目に杏先輩は


「テストも終わったことだし皆の点数&順位発表をしようか」


 こう宣言した。


 「じゃ、護から言ってもらおうか」


 声高らかに言う杏先輩をみていると俺には拒否権は無いのだろうなとつくづく思う。


 「俺はですね……」


 俺、心愛、薫、葵の順で皆に伝えた。


 その結果に杏先輩は満足したようで。


 「最初は心愛が上位に入れるかなぁって心配だったけど、必要なかったね」

 「護や葵にも教えてもらいましたし。あたし自分自身でもここまで取れるとは思ってませんでした」

 「うんうん。でも次からは気を付けるようにね。段々と難しくなっていくから」

 「分かってます」

 「じゃ、次は私たちだね」


 そう言い順に発表する先輩達の結果に俺たちは唖然とした。


 杏先輩は計九百点満点中八二六点、クラス別順位一位、学年順位一位。佳奈先輩も杏先輩と同率の一位。悠樹先輩は八一五点、クラス別順位一位、学年順位一位。成美先輩は七九九点、クラス別順位三位、学年順位六位。渚先輩は八百四点、クラス別順位二位、学年順位二位とのこと。


 羚からも青春部は賢いみたいな話を聞いていたが、ここまでとは思っていなかった。


 葵の家での勉強会でも、杏先輩は佳奈先輩に、成美先輩は渚先輩に無理矢理勉強させられていたような感じがしていたというのにこの結果。杏先輩に至っては佳奈先輩と同率である。


 「まぁ、皆上位にいるから良いってことで」

 「そうですけど。先輩たち、頭良すぎですよ」

 「そんな事ないとは思うんだけどね。やる事やれば取れるんだよ。後あの先生はこういうのを出すってのが分かってくるから勉強しやすくなる」

 「そんなことよりも杏。何か言うことがあるから私を呼んだんだろう。用があるなら早く言ってくれ。生徒会の仕事があるんだ」

 「そうだったの? 言ってくれればそうしたのに」

 「私は教室を出る時にそう言ったはずだが」

 「そうだっけ?」

 「はぁ……。もういいから早くしてくれ」

 「分かった」


 杏先輩は満面の笑みを浮かべなからこう言うのであった。


 「テストも終わったから皆で探索に出かけますっ!!」

 「探索…………ですか?」


 この杏先輩の突拍子もない言葉に反応したのは葵だった。


 「うん。一回みんなで集まったりしたけどそれは勉強会。それとは別に買い物をしたり映画をみたりしようということ」

 「いきなりですね………………」


 葵の言葉に申し訳なさそうに。


 「ゴメンね。本当なら勉強会の時に言うつもりだったんだけどね。もしかして都合悪かった?」

 「いえ、大丈夫ですよ。土曜日でも日曜日でも」

 「良かった。他の皆も大丈夫かな?」

 「はい。大丈夫です」


 俺も含め皆もそう答える。しかしそう答え無かったのは佳奈先輩だ。


 「悪いが私はいけない」

 「どうして? 生徒会?」

 「そうだ」

 「土、日どっちとも生徒会なの? 片方休めたり出来ないの?」

 「無理だな。テストがあったから仕事が溜まってるんだ。私のことは気にせず楽しんできてくれればいい」

 「本当に良いの? 日変えるよ」

 「いいと言ってるだろう?」

 「うん、ゴメン………………」

 「気にするな」

 「どこに出かけるんですか」


 ここら辺一帯皆が集まりやすい場所で、佳奈先輩を除く八人の人数でゾロゾロと歩くとなると近くにそう簡単にあるとは思わない。


 「どこって、御崎駅だけど」


 まぁ、あの場所の繁華街は悠樹先輩と一緒に行ったため少しくらいの土地勘はあるつもりだし、八人で歩くとなるとやはり他の人の邪魔になる可能性がある。


 「この人数で行くのはどうかと……」

 「その辺については分かってるよ。四人四人でメンバーを分けるつもりだから」


 この杏先輩の言葉に過剰に反応したのは薫だった。


 「そのメンバーは自分が好きな人と組んでも良いんですかっ!?」

 「メンバー選びはクジでするから、それは無理かな」

 「そうですか……」


 薫は落胆の表情を浮かべながら席に戻った。よく見ると、心愛や葵も似たような表情をしている。


 三人の気持ちは分からなくてもない。三人からは好意を寄せてもらってるし、どちらかと言うと俺も三人と組みたいという気持ちはある。


 別にあれだ。先輩達と組みたくないというわけではない。


 悠樹先輩にはこの間の勉強や晩御飯のお礼を言いたいし、佳奈先輩と杏先輩の二人にはどうしたらそんなに勉強出来るのか聞いてみたい。渚先輩と成美先輩にはどうしてそんなに仲が良いのか聞いてみたいと思う。


 ふと、隣に座っている悠樹先輩を見ると薫ほどではないが落ち込んでいるように思えた。


 もし、悠樹先輩が薫達と同じ理由で落ち込んでいるのなら、それは俺にとって喜ばしいことなのかもしれない。薫、心愛、葵の三人にも好かれてその上に悠樹先輩にも好かれているとするのなら、羚に何を言われるのか分からないし、悠樹先輩が俺のことを好きだと思えるほど俺は何もしていないし、自分自身に好かれる要素は無いと思っている。


 いうなれば心愛や薫、葵の三人にも少し手を差し伸べた、だけだしただそれだけだ。


 こんなことを考えていても仕方ないし自己嫌悪に陥るだけだしこの事を考えるのはやめよう。


 「土曜日と日曜日どっちにするんですか?」

 「皆が集まりやすい日のほうが良いよね。護はどう?」

 「俺ですか? 俺はどっちでも構いません」

 「じゃ、日曜日にしよ。みんなはどう?」


 「大丈夫です」 「OKです」 「了解」 とそれぞれに口を開く。


 「じゃ決定。集合時間は葵の家で勉強した時と同じ時間で九時で良い?」

 「分かりました」

 「後、お金は少し大目に持ってきたほうが良いかな」

 「分かりました」

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