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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第二編〜五章〜悠樹√〜
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心境変化 #1

 「おつかれさまー。まもるー」

 「ねむいっす」

 「あは、あたしもだよ」


 ビーチバレーが終わった後も海で散々遊び、風呂に入って、夜ご飯のバイキング。そして、今になる。


 三日目ということもあり、なにかこれまでと違うといったことはなくなってきた。それでも楽しい。これだけの人数で来ているのだ。飽きないし、見るものがある。

 

 皆といる時はもちろん、部屋にいる時でも、成美がかなり気をかけてくれる。


 女子と二人きり。普通に考えたら、それはおかしいわけだ。一緒の部屋で。だが、青春部は、俺以外全員女の子なわけで、避けられないことである。


 嫌だ、という感覚はない。俺だって男だ。


 「明日で終わりなんですね」

 「そうだねー。あっというまだったよ。本当に」

 「はい」


 成美と同じ部屋で過ごせる時間もあと少し。これが、薫だったら。悠樹だったら。もう少し気持ちは楽だったかもしれない。


 「もう寝る? 護」


 テレビのチャンネルを弄りつつ、成美が声を出す。時計を見ると、時計の針は午後十時を指していた。


 「そうですねぇ……………………」


 まだ寝る時間ではない。それに、ランとの約束がある。昨日はララ。今日はランだ。内緒にしないといけない。


 「もしかして、今日もどっか行っちゃう感じかな?」


 (……………………っ)


 バレている。もちろん、誰と会うかまでは分かっていないだろうが。申しわけない気持ちになってくる。


 「んー、別にいいよー。ちゃんと帰ってきてくれたらね」

 「はい」


 何も聞いてこない。詮索してこない。内緒だから言えないわけだが、詰められることがないのは楽。まぁ、バレてそうな気もするが。


 携帯を確認する。準備が出来たらメールをするとランは言っていたが、そのメールはまだ来ていない。


 (先にロビーでまっておくか)



 「いってらっしゃい」


 部屋から出ようとする護の背中に、成美は声をかける。


 どんな理由があって、誰と会うのか。聞くことはなかった。知りたくないわけではない。かなり気になる。でも、聞いちゃいけない。昨日と同じだ。


 聞く勇気がない、とも言える。


 こうして一緒にいる。彼氏でもなんでもないけど、今は同じ部屋で過ごしている。無駄にしてはいけない。初日からずっと思ってきた。


 (でもなー……………………)


 こういうところが出てしまう。遠慮している場合ではない。自分のことを一番に考えなくてはいけないのに、それが出来ていない。最初からそうだ。


 (いやー……)


 どうしようか。三日目も終わってしまう。明日は最終日。チェックアウトの時間もあるから、邪魔されることなく護の隣にいれる時間も限られている。



 (あはは……)


 悩んでいる場合ではない。やるしかない。護が帰ってきてからだ。どれくらいで戻ってくるのか分からないが、準備をしておかなければ。


 (終わらせようか)


 結果がどうなるか。ここまでの過程はどうだったか。


 成美は、護に魅せられてばかりだ。魅せることは出来なかったかもしれない。それならそれで、仕方の無いことだ。もういい。これまでのことはどうでもいい。


 結果だ。


 結果が全てなのだ。


 (……………………)


 そう思いながらも、護を見送る成美の顔には、不安の色が浮かんでいた。



 「それじゃ行ってくるね。ララ」

 「んあ? どこに?」


 (はぁ……)


 「護君のとこ」

 「護のとこ……………………? あぁ、僕が昨日行ったもんね」

 「うん」


 初日が真弓。昨日がララ。そして、今日はランの番だ。


 言いたいことが決まっているわけではない。伝えるべきことはある。迷っている。今するべきなのかどうか。


 迷っていたとしても、ランは護に会いにいく。三人で決めたこと。自分だけ行かないという選択肢は生まれない。


 「いってらっしゃい」

 「なるべく早く帰ってきなさいよ」


 真弓からも声がかかる。布団に潜っていたから寝たものだとばかり思っていた。


 「はい」


 もちろん、そのつもりだ。長く護を拘束する必要はない。むしろ、それはしてはいけないことだ。


 護は、青春部として、ここにいる。それはラン達もであるが、わざわざ三人で、皆と来ることを避けてここにいるのだから、抑えていかないといけない。


 (そういえば……)


 「ねぇ、ララ?」

 「んー? 僕に聞きたいことでもあるのかな?」

 「護くんの部屋にはいったの?」

 「違うよー。成美先輩と同室だし、さすがに行けないよ」


 (そう)


 「ありがとう」

 「いいよー」


 連絡は済ませてあるし、護と会うのはロビーだ。メールでもそう伝えてある。ちょっと思っただけだ。部屋に行けるかな、と。


 (一人部屋じゃないんだ……………………)


 想定内。護をひとりにすることを、他のメンバーが許すわけがない。ただ、そのペアが成美だというのは驚きである。


 (薫ちゃんとかは何してるのかな)


 もし、薫と同室であるなら、それは納得できる。何も不思議ではない。幼馴染みであるし、違和感ない。もしくは、杏か。リーダーとして、部長として。


 ララは、成美先輩としか言わなかった。ということは、護は成美と二人きり。他のメンバーは同じ部屋ではない。そういうことになる。成美だけが勝っている状態。


 ランは、今からそれを邪魔しにいくわけである。

 

 

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