曇りのち #4
「ねぇ、護」
「ん?」
ちょんちょん。肩の方に小さな刺激がくる。心愛だ。海水で身体を濡らし、笑顔が輝いている。
「もう終わっちゃった?」
「あぁ」
「手伝おうと思ってたんだけど……」
「すまんな」
「ちょっと遅かったわね……………………」
二人ずつで問題なかった。逆に、葵と心愛が入れ替わっていたとしても。
「終わったなら、遊べるよね。護」
「そうだな」
「……………………行こ? 護」
これから何をしようか。やれることはたくさんある。基本的には俺だってのんびりしたいが、こういう場なので、そう意見はしまっておく。ここに来た意味を考える。
〇
(ちょっと待ちましょうか……)
「護くん」
心愛に連れていかれそうになる護の腕を掴む。取られないように。いけないことだ。護を手伝ってもいないのに。先に海で遊んでいたというのに。終わったところを見て、わざと心愛は来ている。
(はぁ……)
割り込みは許されない。でも、たまに葵だってしてしまうことがある。どっちもどっち。おあいこだ。
「なんだ?」
「置いていかないでくださいよ」
忘れてもらっては困る。この後も、しばらくの間、護は自分のものだと思っていたのに。
邪魔だ。でも、仕方の無いことだ。その中で、頑張っていくしかないのだ。想定内。想定外のことが起こらないようにする。そのためには、全てのことを考えないといけない。こうなればこうなる。そう考えておけば、想定外のことなんて起こらなくなる。
「そうだな。葵も一緒に、」
「当然です」
こちらか護の手を握る。相手を待たない。葵が引っ張ろう。心愛には任せない。
「お嬢様もいってらっしゃい」
「分かった」
(咲夜さん……)
ちょっとだけ悲しそうだ。寂しそうだ。
〇
(さてと)
「何をしましょうかね……」
さっきまで、護、葵、佳奈、咲夜の四人で賑やかに準備をしていたというのに、一瞬にして静かになってしまった。咲夜の周りが、静か。ひとりぼっちだ。
こういう立ち回りになるのは分かっていたことだから、もちろん、時間を潰すものは準備してきている。皆が遊んでいるのを眺めているだけでも良かった気がするが。
(まぁ)
観察をしておくのが一番だ。何が起こるか分からない。目を離すことはよくない。それなら一緒に遊べば、となる。
でも、咲夜は見ているだけ。自分はメインではない。あくまで、傍観者だ。交ざるのは良くない。自らそこに交ざることは許されないのだ。