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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第二編〜四章〜悠樹√〜
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れっつ、ごー  #3


  「たっだいまー!!!!」


 襖が、バン、と、そこそこの勢いをもって開かれる。ララのおかえりだ。その後ろで、ランはその大きめの音にびっくりしている。真弓も少々。急だったから。


  「静かに、だよー。ララ」

  「そうですよ」


 ゆっくりと、息を落ち着けながらランがたしなめるように言う。


 ごめんなさい、そう頭を下げるララ。その行為は一瞬。すぐにこちらに駆け寄ってくる。


  「もう護は帰っちゃったの? 真弓先輩」

  「そうだよー」


 三十分前くらい。護が帰ってしまってからは暇であった。別に何かをするわけでもない。二人の帰りを待っていただけ。することも別にない。


  「次は僕でいい? ラン」

  「いいですよ」


 護とのふたりきりの時間を。もう、真弓の番は終わった。護の思いを確認して終わった。それが目的だった。真弓の。二人はそうではないだろうが、真弓は満足した。この場所においてしようと思っていたことは終わった。後は、これまで通り、見守るだけだ。


  「どうかしたの? 真弓先輩」

  「なんもないよー。うん」


 真弓は知っている。でも、他の人は知らない。護が誰を好いているのか。


 知らないから頑張っている。知らないからこそ頑張れる。振り向いてもらおうと、一番になれるように、頑張っているのだ。


 でもそれは。無駄となる。その思いを知ってしまった時、護の答えを聞いてしまった時、どう思うだろうか。


 耐えることが出来るのだろうか。


 少なくとも、真弓は耐えられる気がしない。だからこうして、外から見ているわけであるし、その感情を護に向けないようにしている。先輩後輩。その関係だけで十分なのだ。このままで、問題はないのだ。


 他の皆は、今より先の、一番になれるように、頑張っている。


  「あーあ……」


 なんか、ため息が。ついてはいけないと思いつつ、聞かれないように。



  (いつ頃にしようかな)


 順番が回ってきた。自分の番が。今度は、ララが、護と二人きりになれる番だ。


 何をしようか。


 ノリで決める。


 それでもいい。特別に何かを決めることはないのかもしれない。


 二人きりになれることは決まっている。時間さえ確保できれば、邪魔するものは現れない。


  「にしし」


 この辺で、結果を出したほうがいいだろう。先延ばしはよくない。前から思っていたことだ。


  「きょう……、いくの? ララ」

  「どうしよう」


 まだ時間はある。夜でもいい。もしかしたら、そっちの方が、時間を長く使えるかもしれない。会うならそのほうがいい。


  「今日かな」

  「わかった」


 ランの番もある。そのことも考えていかないといけない。


(まぁ………


 そもそもおかしいのだ。自分も、ランも好きなのは護だ。それなのに、互いが足を揃えて前に進んでいる。抜け駆けをしないようにしている。


 普通なら、先に手に入れたいと、そう思うはずだ。


  (双子だから…………?)


 ずっと一緒だった。だから、ここでも、自然と足並みが揃ってしまう、というのだろうか。


 そんな必要はまったくない。目的達成のため、そのようなことは今すぐにでもやめるべきだろう。


  「僕は……何をすればいいのかな…………」


 ボソっと。


 自分の想いは、当然、伝えてある。そして、一度、一度だけ、それを行動に移した。


 だが、それだけのこと。ララは思う。あれでは足りなかったと。だって、その後、特段変わった様子もなかった。距離は、少しくらいは縮まったかもしれない。でも、たった、少しだけ、微々たるもの。影響はなかったと考えるのが良いだろう。


 だからララは、まだ足並みが揃っている、と考える。もしランがララの知らないところで何か護としていたというのなら、ララはこの時点で負けていることにはなるが。


  「ララ?」

  「んー?」

  「着替え、よ?」

  「…………? 忘れてたね」


 海辺で杏に見つかりそうになって、時間を潰し、こうして戻ってきた。まだ水着のままであった。水着のまま、館内を移動していたわけだ。この部屋で着替えて外にでたわけではない。きちんと更衣室で。そこまで戻るのに、また、この格好のままで彷徨かないといけない。


  「自然に帰ってくるから気づかなかったよ」


 ララも気づいていなかった。水着を着ているということを何故か忘れてしまっていたから。



  「行こ」


 ララの手を握り、更衣室に向かう。冷房が効いていたから寒くなってきた。こんなところで風邪は引きたくない。


  「そだね」


 ランが先頭に立つ。


 ランの声は届くのだろうか。やっと回ってきた自分の順番。三番目。自分がそれでいいと言ってしまったから仕方ないが、速いほうが良いのは確実だ。遅れているわけだから、先より頑張らないといけない。


  (ん……)


 ランは思う。これが、この三人だけのことであったのなら、どれだけ楽なのだろうと。他の青春部のメンバーを加えての勝……。


  (あぁ…………)


 三番目。この三人の中で最後。でも、全員で考えたら、自分は何番目なのだろうか。


  (最後、だよね……)


 何が出来るだろうか。遅れて参加したものに、資格はあるのだろうか。ララのように頑張れるだろうか。


  「いけないんだよね」

  「どうしたの?

 声がララに届いてしまった。


  「ううん。なんでも」


 最低限、そこまでは頑張らないと。近くで見ているのだから生かしていかないといけない。

 そうしないと勝ち目はない。

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