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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第二編〜四章〜悠樹√〜
266/384

raison #3

「うーん」

 返事が返ってこない。

 ……つまんない……。

 部屋にいるのは真弓だけ。ララとランは、二人で仲良く外に出て行ってしまった。おそらく、真弓の邪魔をしないようにであろうが、今は少しだけいてほしかたと思う。一人きりだから。

「はぁぁ………………」

 十分経った。ずっと携帯を見ていた。返事が帰って来たらすぐに見るためにずっと見ていた。それだけのことで時間が経ってしまっている。

 護は今、何を考えているのだろうか。驚いているのだろうか。何を返せばいいのか考えているのだろうか。

 ……両方か……。

 どういう答えを、返事をすべきか。もし、真弓が護の立場にいたら。

 ……悩んでいたのかな……?

 どうだろう。ちょっと分からない。

「あっ」

 返ってきた。やっとだ。

 ”もしかして、真弓はさざなみに来ているのですか? ”

 護からのメールにはそう書かれていた。

「だねぇ」

 護もそのことは理解したか。このメールは確認だけである。

 正しくいうと、来ているのではなくて、ここにいる。合宿と同じ期間、真弓達はここに滞在するつもりである。

「返信、返信……………………」

 どういう返信をしようか。

 ”うん。そうだね。驚いた? ”

 単純な、それであって、メールを続かせる内容を。早く会って直接話をしたいが、ここでも重要だ。会うまでに繋げておきたい。

「すぐだね」

 一分もなかったか。今度はすぐだった。ありがたい。

 ”はい。会いたいとのことでしたが……、どこでですか? ”

 そうだ。どこにしよう。決めていなかった。ここが学校であれば、部室など、使える場所はたくさんある。が、ここは違う。さざなみ。そして、バレてはいけないと制約もある。余計に難しい。

 ……バレないように……。

 やっぱりそこが難しい。そんなのはこうすると決めた時から分かっていたことだ。分かっていながらその道を選んだ。だから、頑張りたい。

 ”私の部屋、こられる? ”

 当然、ここであるなら、行きと帰り以外バレることはない。もし、そのどちらかで護が誰かに見つかったとしてもそれは護だけであり、護が隠してくれるのであればバレることない。護なら、大丈夫。そういった場面で本当のことは言わないであろう。

 ”分かりました”

 返ってきたのはこれだけ。大丈夫。もうすぐ護が来る。もうすぐだ。ここからは、予定通り、ここの場で自分がしたかったことをしていくだけだ。



  二階だったけ。

  真弓に呼ばれたので、真弓がいる部屋に向かう。さざなみに来ていると言われた時はかなり驚いたが、あえてそういう風に参加したことには、何か真弓なりの理由があるのだろう。そこはあまり考えないようにしておく。

  もう一回メールを見直す。二一五。真弓がいる部屋はそこだ。

  真弓はどうして俺を呼んだのだろうか。理由は分からない。だって、メールに書かれていないから。会いたい、そうは書かれていたが、それだけ。ホテルのロビーや外ではなく、あう場所をわざわざ部屋にしているということは、誰かに見られたくない、見つかりたくないということなのだろう。容易に考えることが出来る。

  「ここか」

  オートロックだし、一瞬どうしようかと思ったのだが、成実にはメールを出しておくことにした。鍵はフロントに預けた。部屋に戻ってきたら何か言われるかもしれないが、いや、絶対にどこに行っていたのか問われるだろう。真弓の部屋、とは言わない。

  言ってはいけない。

  「護かなぁ? 」

  部屋の前、チャイムを押そうとしたそのタイミングで、扉の向こうから声がかかった。

  「はい」

  「今あけるねぇ」

  一歩後ろに下がる。

  「おはよ、護」

  「おはようございます」

  いつも通りの真弓。ぴょこぴょこと、猫耳型のカチューシャもいつも通り。動かしてほしいと言えば、それに応えてくれるだろう。

  「はいって、はいって」」

  周りをキョロキョロと見ながら、俺を引っ張るようにして部屋の中へ。

  「大丈夫ですよ。この階には誰もいませんから」

  「あ、そうなんだ。ラッキーだねぇ、それは」

  この部屋も、俺と成実がいる部屋とさほど変わりはない。

  「………………ん? 」

  部屋の隅に荷物が集められている。それは分かる。

  「どうしたの? 」

  「いえ…………」

  「あ、言うの忘れてたね。ララとランもいるよ」

  「え………………………………? 二人も? 」

  「うん」

  荷物が多いと思ったらそういうことだったのか。

  それにしても、青春部のメンバーが全員集合したことになる。このさざなみに。てっきり来ているのは真弓だけだと思っていた。だから何か特別な理由があると思ったんだが、ララとランもいるとなると、ちょっと分からなくなる。

  どうしてここにいるのか。最初から、こちら側に参加していればよかった話。わざわざ別行動をする必要はなかったように思える。

  「どうして、ですか? 」

  「どうして、かぁ………………………………」

  ごろんと、後ろに倒れる真弓。その視線は天井。

  着ている服がふわりと舞い上がって少しだけ真弓の柔らかそうな肌が見えたことは言わないでおこう。

  「どうして、って言われても。まぁ、色々あるんだけど……」

  真弓は言葉を続ける。

  「私はね、知りたいことがあるんだよ」

  「俺のことですか? 」

  「だねぇ。護のこと」

  「そろそろ、答え、決まってるんじゃないのかな? 」

  ひょいっと身体を起こし、その真弓の視線ははっきりと俺を捉える。近い。目力が。

  「答え……………………」

  答え。何の答えか。さすがに、なんとなく、雰囲気で、真弓が何を聞こうとしているのかは分かる。

  「言うよ。護。君は…………、君は誰が好きなんだい? 」

  やはり。思った通り。直球て飛んできた。


  ……さてと……。

  護はなんと答えるのだろうか。一つの名前を出してくれるのだろうか。

  ……うん……。

  護から目線をそらさない。そうしないといけない気がするから。

  真剣だ。それは、真弓も護も。冗談で質問しているわけではない。これは、この後を左右するような質問。もしかすると、今後の青春部にも影響するかもしれない。

  ……まぁ……。

  さすがに大丈夫だろうか。こんなことで崩れるような間柄ではない。このちょっとした付き合いでも、それくらいのことは分かる。

  「これは、私が直接、自分のために聞いてることだよ。ララとランは関係ない」

  「ララに………………………………」

  「告白されたりした? 」

  「えぇ」

  それは、何回目にあたる告白なのだろうか。ララの告白は何番目にあたるのだろうか。ララに対しての優先順位はどれくらいなのだろうか。

  そして、それは、上に上がれるほどの順位なのだろうか。下の方である、ということを前提に真弓が思っていることではあるし申し訳ない気持ちがあるが、後から割り込むような形で入ってきた二人が、上位にくるようなことがあるとは思えない。

  ……だって……。

  もしそんなことがあったら、以前から護のことが好きだった、佳奈達の立つ瀬がない。それらを超えるほどの想いがあれば別なのだが、ないとは思ってはいないが、どうしても佳奈達を、佳奈を応援してしまう。

  「私にほんとのことを話してよ。誰にも言わない。言えないことだから」

  「真弓は………………………………」

  「私は…………私だって当然知ってるよ。ララ達が、他の皆も護のことが好きだってこと。その上で、だよ。私には教えてほしい」

  自分は護のことを好きにはなれないから。

  「護は誰が好きなの? 」

  二度目の問を、護に飛ばす。強く、強く。知りたい、というか、知っておきたい。自分の振る舞い方がそれで変わったりするわけでもない。

  自分が蚊帳の外にいるから。護にこの質問をしている理由の半分くらいは、それが理由だ。

  正直、言ってしまえば、護が誰が好きであろうと、真弓はそれを応援するだけ。両方を応援する。護が好きな人も。護のことを好きな人も。

  ……あはは……。

  ……私は何を言っているんだろうね……。

  矛盾している。その両方を応援するということか。応援をするということは、報われて欲しいと思っているから。

  でも、両方が報われることはない。それなのに、真弓は両方を応援したいと、そう思っている。

  ……いや……。

  ある意味、報われるのは報われるのだろうか。護のことが好きな人を全員応援する、そうなれば、それは誰が護に選ばれようと報われるのことになる。

  「言っても大丈夫…………ですか? 」

  「うん」

 

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