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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第二編〜四章〜悠樹√〜
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raison #2

  「あぁ………………」

  誰もいない。家。一人きり。

  「暇だ暇だ暇だ暇だぁぁぁぁぁぁ」

  今日は一人。予定もない。むしろ、予定を作らなかったと言えるだろう。

  だからといって、何ものんびりと時間を無駄に過ごしたいわけではない。敢えての選択。護がいないからこういうことになっている。

  護は合宿に行っている。旅行に行っている。まだしばらく帰ってこない。しばらく。たった数日であり、自分がこの家から離れていた時間のことを考えるとその数日は微々たるものだけれど、この家に帰ってきて、となると昔のような感覚はもうない。今に合わせる。

  「どうなのかなぁ。答え、出るのかな…………」

  なんの答えなのか。簡単だ。恋の答え。誰を選ぶのか。

  ずっと見てきた。一時的には離れていたが、姉として、護のことを。ずっと。

  だが、護が誰を選ぶのか、それは姉である沙耶にだって分からない。薫になるのか、はたまた違う人になるのか。

  「ここまで、かぁ……」

  お姉ちゃんなのに、一番近くで見てきたのに、一番重要なことが分からない。

  もしかしたら、もう答えは出ているのかもしてない。沙耶が知らないだけの可能性もある。

  もうすでに伝えていて、他のメンバーは知っているという可能性だってあり得る。まだ悩んでいる可能性もある。沙耶が一番に思いついたのは最後だ。

  ……護には……。

  伝える決心が、まだないと思う。恥ずかしいとか、その先のことが不安だとか、詳しいとこまでは分からない。自分の立場を持ってしても。

  ……だって……。

  恋をしたことがないから。完全にしたわけがないというわけではない。護に恋をした。おそらく、それが最初で最後の恋なのであろう。そして、絶対に叶うことがない。どれだけ頑張ろうとも、沙耶が恋という部分において報われることは絶対にない。

  諦める。選択肢はこれしかない。そして、それは応援するということに繋がる。

  ……誰を……?

  誰を応援すればいいのだろうか。全員か、一個人か。それはもう沙耶の個人的な価値観による。

  もし、一人を選んで応援するのなら、その相手は薫ということになるのだろう。幼馴染として、護の一番の友達として、小さな頃から知っているから。だから、薫という選択肢は無難なように思える。

  「いやいや」

  応援する理由として、それは一体どうなのだろうか。あまりにも、おかしくはないだろうか。無難。そう思ってしまった。ダメなこと。

 相手が求めるのは、心からの応援。中途半端なものは必要ないだろう。適当なものは必要ないだろう。もし、自分がされた時のことを思うと余計にそう思う。

 応援されたこと。恋の応援。あまりされたことがないかもしれない。だって、護に対してのこの想いは絶対に叶わないものだから。知っている人すら少ない。おそらく、知っているのは魅散だけだろう。

 絶対に報われはしない。なのに、沙耶は護のことを想い続けている。魅散はたまに応援してくれる。ありがとう。今度会ったら伝えないと。


「さてと……………………」

 二日目。二日目が始まった。

 真弓は思う。そろそろ行動をしないといけないと。のんびりしていると、あっというまに時間が過ぎていってしまう。楽しいから、いつもより早い。

 護には、まだ連絡をつけていない。会った時、どうしようか考えていたら忘れていた。

 護に時間があるとは限らない。昨日のうちに連絡をつけていなかったから、もう今日の予定が埋まってしまっているかもしれない。でも、一応、護に聞いてみる。どうなのかな。

 電話でしようか。メールでしようか。そんなのは、もちろんどっちでもいい。護に会いたい。それが遂行されるだけでいい。

 ……なんで……。

 どうして、こんなにも護のことが気になるのだろうか。会いたいと思うのだろうか。

 もしかしたら護のことが好きなのかもしれない。だが、それは、その意味はLikeの方だ。決して、Loveの方ではない。決して、だ。好きになれるわけがない。好きになったりしたらいけないのだ。

 だって、佳奈が好きだから。ララが好きだから。ランが好きだから。そんな上で護のこと好きになるなんて真弓には無理なことである。だから、それ以上のことは思わない。当然のことである。

 応援する。真弓の立場はそこにある。だらか、真弓はここにいる。青春部として参加するわけではなく、わざわざ二人を誘ってここにいる。

 応援といっても、真弓にできることはないかもしれない。だって、二人は強いから。何もしなくても、二人は頑張っている。これまでのことを振り返ってみたらそう思う。

 ……でも……。

 純粋に応援できるわけではない。三人の想いを知っているから。ときたま、誰を応援すればいいのか分からなくなる。

 佳奈か。ララか。ランか。

 側にいるだけでもいいのかもしれない。言葉にする必要はどこにもない。そんなちっぽけなことだとしても、たったそれだけのことだとしても、それが励みになったりもする。真弓にだって経験がある。そして、経験があるということは、真弓にも同じことが出来るということである。

 ……いや……。

 出来る出来ないの問題ではないだろう。

 ……私が……

 していかないといけないことだ。

考えよう。護と会って何をするのかを。

 おしゃべり。それだけでいいだろう。根本的な話。この恋の、核となる話をしよう。

 護が好きなのは誰か。誰を選ぼうとしているのか。もちろん、真弓が聞くようなことではない。部外者だから。でも、知りたいと思う。蚊帳の外にいるから、護が誰を選んだとしても、直接自分には関係ない。ある意味、遠慮なく聞ける。護としても答えやすいかもしれない。

 ……んー……。

 護はどういう風に答えてくれるのだろうか。はぐらかしてくるのだろうか。ちゃんと答えてくれるのだろうか。

 ……もし……。

 後者になった場合。護の口から発せられる名前は誰になるのだろうか。佳奈だろうか。ララだろうか。ランだろうか。言ってしまえば、その三人のうちの誰かがいい。違っていたら、ちょっと悲しい。

「メールにしよ」

 電話をしたとして護の隣に誰かがいたら気付かれてしまう。それだと意味が無い。誰にも気付かれないように。それが目的でもある。バレてしまったら、わざわざこうしてここに来ている意味がなくなってしまう。

「なんて送ろうかな……」

 単純に、シンプルにいこう。


「食い過ぎたか……」

 少し腹が痛い。そんなに食べるつもりはなかったんだが。

「あ」

 布団が直されてる。寝ようと思っていたわけではないが、なんとなくちょっとだけ横になりたい気分だった。

 今は俺一人。成実はまだ戻ってきてない。薫と話があるとか言ってた。一気に静かになった感じ。

「何時だ、今」

 会場に携帯を持っていくのを忘れてたから、時間を確認することが出来なかった。腕時計も忘れてたし。

  ん…………? 」

 メールがきてる。時間を見ようと思って携帯を開いたのに、その文字が先に目にはいってしまった。

 ……え……?

 メールの送り主は真弓だ。一体どうしたのだろう。合宿のことが気になるのかもしれない。参加してないし、もし俺がその立場だったら気になるのは当然だ。

「会いたい………………………………? なんで? 」

 真弓からのメールにはそう書いてあった。会いたいんだけど、時間ある? と。

 まぁ、時間はある。杏が急に何かをやり始めるかもしれないから、ここからここまでは空いてるっていう風には分からないけど。

「ん…………? 」

 真弓がこのメールを俺に送っていた理由が全く分からない。

 だって、俺達は合宿に来ている。当然、真弓は知っている。合宿の話をした時に真弓もその場所にいたから。気になったからメールをしてきたと思ったけどそうではないようだ。

 会えるわけがない。場所が場所だ。そのことをわかった上でこのメールを出しているに決まっている。

 だから、余計に分からない。真弓が何を考えているのかが。

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