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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第二編〜四章〜悠樹√〜
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絆 #2

 ……一緒にシャワー……。

 そんなことは当然無理なことで。一緒に入ったところで何かあるかといえば何もないのだけれど、一緒に入りたくないわけではない。

 ……だって……。

 薫とかは幼馴染みであるから、そういう経験もあるだろう。小さい時で、さすがに中学とかの頃ではないだろうが、羨ましい。普通に、そう思ってしまう。

 ただそれだけの話。

 自分が経験してないことを、他の人が経験している。それだけ。

「部屋、出ときましょうか? 」

「んー、いや。別にいいよ。ここにいて」

 そう。これには二つの意味がある。待っていてほしい。後は、言わずもがなであろう。

「了解です」

「うん」

 ……さてと……。

「…………………………ふぅ」

 一息いれる。

 ……ここからだよ。成美……。

 ここからだ。頑張らないと。

 そろそろ、決着をつけよう。


「おはようございます。杏様。心愛様」

 気持ちいい朝だ。窓を少し開けていたから、暑いというわけでもない。清々しい朝だ。

「うん」

「お……、おはよう…………ございます………………」

 杏はいつも通りのスッキリとした感じ。心愛は眠そうである。

「心愛様。大丈夫ですか? 」

「ごめんなさ………………ふわぁ……」

 ごめんなさい、そう言い切る前に、欠伸が。

「そんなんじゃダメだよっ。心愛」

 その眠そうな、まだ半分寝ているような心愛の頬をプニプニしている杏。杏はとても元気そうである。

 ……杏様はいつも通り……。

 杏だって、そんなにすぐに寝ていたわけではない。携帯を見て一人で色々考えているように見えた。

 心愛は三人の中で最初に寝ていた。なのに、眠そうである。

「杏先輩…………なにするんですか………………にゅぅ…………」

「やっわらかいねー」

「……………………」

 微笑ましい光景がそこにある。

 ここにいなければ見ることができなかったものだ。関わりをこうして持っているからこそ、今、これを見ることができている。

 ……どうして私はここにいるのでしょうか……。

 それは佳奈の執事であるから。佳奈が青春部に入っているからだ。

 といっても、これまでは関わりはなにもなかった。急に、活発になったといえるだろう。

 ……護様……。

 護の影響だ。葵と心愛と薫が、護を連れてきた。これで、要因だろう。

 ……護が……。

 護によって、新たな関係がそこに生まれた。直接的には関係がない咲夜まで、この合宿に参加している。部屋を共にしている。

 ……ありがたいことですよね……。







  ……………………。

 杏にされるがままの心愛。その杏の行動になんの意味があるのか分からないが、別にとめる理由が心愛にはないので。

「ふぅ……………………」

 数秒? 数十秒? 杏のプニプニ攻撃が終わった。

「満足」

 杏が心愛の頬に触れて、一体、何に満足したのかは分からないが、それを聞いたりはしない。聞いたところで、返ってくる答えは、「なんとなく」だと思ってしまうからだ。

「眠気とれたかな? 心愛」

「………………まぁ、少しは」

 杏のもとに振り返り、なんとなく、心愛もやりかえしてみる。

 少し背伸びをして、人差し指で杏の左頬をさしてみる。身長差は不利である。

「あらら……」

 そんな光景を、咲夜が見ている。混ざりたそうにしている、といえば失礼になってしまうが、そんな感じがしなくもない。

「ささ………………」

 二回三回押したところで、杏がさっと後ろに下がる。

「………………っと」

 次、と思ったところで、その先の対象がなくなってしまったので、少し前につんのめってしまう。

 もふ。

 思ったより前に倒れ気味になった心愛。当然、それを支えたのは杏である。杏の胸に、もふり、と。

「大丈夫? 心愛」

 慌てて、心愛は仰け反る。さっきとは逆方向への移動だ。今度は後ろに倒れそうになってしまうが、なんとか踏みとどまる。目はもう覚めているつもりだったが、まだ寝ぼけているのかもしれない。

「はい」

 ちゃんとしないと。頑張っていかないと。

 ……昨日は……。

 昨日は何も出来なかった。それは全員ではあるが、昨日は何も起きなかった。否、誰も行動を起こさなかった。平和であった。

 ……だから……。

 今日は、何か特別な日になるのかもしれない。

「そろそろ、護とかも起きているかな」

「起きてるんじゃないですか? 」

 護は、寝過ごすようなことをあまりしないと思う。断言はできない。そんなとこまで護のことを知っているわけではないからだ。

「成美が起こしたりしてるのかも」

 その可能性はある。だって、同じ部屋だから。心愛だって、もし、同じ部屋になっていたら、そういう行動をおそらく取る。

「成美先輩は……、かなり……」

「んー? 」

「成美先輩、羨ましいです」

 言葉をかえる。

「だねー」

 これから、こういう風に旅行できる機会がどれだけあるのだろうか。年に一回? 二回? その時に、同じ部屋になれるとは限らない。そして、今回のように二人の部屋になるとは限らない。

 確実に、護と同室になる方法。ならざるを得ないようにする方法。

 ……ないわけではないよね……。

 

 

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