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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第二編〜第三章〜悠樹√〜
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到着

「ついたよー。二人とも」

どれくらい電車に乗ってただろうか。四時間? 五時間? おそらく、それくらいは揺られていたと思う。街中を走っていたから、景色を楽しめたわけではなかった。少々暇だと言えば暇な時間だった。

「ねむ……………………真弓先輩……」

「もー、ララちゃんは」

前日楽しみで寝れなかったりしたのだろうか。ララは結構すぐ寝てしまっていた。暇になった原因はここにもある。

「私も寝てしまって……、ごめんなさい…………」

「いいよ。昨日寝れなかった? 」

「少し…………」

「やっぱりそうなんだね」

かくいう真弓だって、いつもより寝れてない。楽しみだったのもあるし、どういう風に行動しようか、それを考えていた。

バレないように行動。なおかつ、護に会う。成功するか分からない。もしかしたら、何も出来ず日が過ぎていくかもしれない。護を遠くから見るだけ、そんなことになってしまうかもしれない。

「ここから歩くの? 真弓先輩……」

「そうだよ」

まだ眠そうである。ランはもう大丈夫そう。

「ほら、ララ」

「んー、眠い…………」

……双子っていいねぇ……。

というか、姉とか妹とか兄とか弟とか、そういうのが良い。一人っ子より、それはもう楽しいものだろう。自分のことを理解してくれる人がそれだけ増えるということだ。

「ランのほうがお姉ちゃんって感じだね」

微笑ましい。笑みがこぼれてくる。

「はは、お母さんのお腹から出てくるのは数分、ララのほうが早いんですけどね」

何かとお姉さんぶるところあるんですよ、と、ランが付け足す。

「そんなことないよー、むー」

眠そうに、目をこすりながら反論する。

「むー、じゃないです」

ララの口真似をしながらにっこり微笑むラン。姉妹の良い在り方だろうか。

「じゃ、行くよ? 」

目的地、さざなみまではもう少し。そこには、青春部のメンバーがいる。護がいる。

予定通りにはいかないかもしれない。いかせられるかどうか、そこは真弓次第。ララとランの二人に、自分についてきて良かったと、そう言わせられるかどうかも真弓次第。

どこまでやれるか。




時間が過ぎていく。何もせずに。といっても、誰も何もしていない。杏から何も連絡がないというのもある。

……護は……。

何してるのだろうか。

「座ったら? 」

「あ、はい」

突然の悠樹の声。佳奈がまだ部屋に戻ってきていないから、当然、声をかけられているのは薫だ。

悠樹の隣に。携帯をいじっている悠樹。そのまま声をかけたのだろう。その画面に集中しているように見えるから。

「………………あ」

「ん? 」

「な、なんでもないです」

悠樹が見ている画面、そこに護の名前があった。本文は真っ白。今から書くところなのだろう。


……ん……。

何を送ればいいのだろうか。

今から会える?

部屋行ってもいい?

あんまり思いつかない。

携帯を持っていっていれば、これは護と成美がいる部屋の前で送っているはずだった。しかし、今、悠樹がいるのは自分たちの部屋。忘れて部屋を出てしまった数十分前の自分に言ってやりたい。

持っていっていれば、おそらく、護と一緒にいれただろう。成美も一緒にいたかもしれないが。

……あーあ……。

時間を無駄にしている。切実にそう思う。こんなことで悩んでいる時間もいってしまえば無駄なのである。

悩む必要はない。他の人とは違って、自分は勝者だ。敗者ではない。

だから、悩む必要はない。自分が思う、そんな行動をすればいい。他者にへつらうことなく、堂々と。それが勝者だ。

「………………………………」

そうは思う。思っていても、これが結びつかない。行動に移せない。思うだけで終わってしまう。それが駄目だということが分かっていてもだ。

「やるしかない」

携帯を閉じる。メールは送らない。それでいい。

「何を……ですか? 」

隣に薫がいるのを忘れて声を出してしまった。

「なんでもない」

そう返しておく。自分の問題。薫には関係ない。


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