さざなみ #4
……そのままか……。
そのまま。今まで通り。本当に、本当にいいのだろうか。
……いや……。
そう思わない。
七夕パーティーを考えたときから、杏に頼るのではなく、自分から少しずつ行動しようと、行動できるようにと思ってきた。
「そのままねぇ……………………」
護がいったのはイメージ的な話だ。成美のイメージ。自分が思っているのはイメージとかそういう話ではないけれど、変わる必要がないと言われると、そこまでなのかな、と考えてしまう。
変わらなければ、と思ってきた。変わっている、と思える。
もちろん、護に出会う前の成美とそれからの成美は違う。護を好きになった。それだけのことで、ガラッと変わった。だけれど、それは護には伝わってはいないのだ。護が起点になっているのに、だ。
時間だけが過ぎていっていたのだろうか。
「そのままでいてください……。成美は……」
また護が声を出す。少し、なんだか……。
どうして? なんて質問はしない。それは無粋だ。する必要はない。気になりはするけれど。しない。やめておく。
……そのまま……。
もし、自分の意に少しだけ反してそのままでいるとするなら、この夏休み、この合宿の位置付けはどうなってしまうのだろう。
無。
そう。意味がなくなる。自分でなくすことになる。
それでいいのだろうか。護はそうしてほしいと思っているが、本当にいいのだろうか。
……納得できる……?
そこが問題。
自分の行動に納得できないと意味がない。イヤイヤ行動したところで、それは結果に結びつかない。
そういうのは嫌いだ。嫌だ。
「ほんとうに………………? 」
「はい……」
同じ感じで頷く護。
それを護が望んでいたとしても。
会話が止まった。成美から返事が返ってこない。いや、まぁ、返してほしいから言ったわけではないんだけれど。
変わる。変わらない。変わらなければならないのは俺の方だ。他の皆が変わる必要はない。それは、悠樹にも当てはまる。そのままでいい。
優柔不断。おそらく、俺の欠点なのだろう。悩んで、悩んで、悩みまくっても、答えを出せない時がある。今回がそれにあたった。
絶対に答えを出さなければならないから、答えを出した。皆のことを考えながら。
でも、俺は、そこまでのことしかしていない。その先のことをしていない。それをしないといけない。多分、そこまでやらないと、答えを出したことにはならなかったりするのかもしれない。
どれだけ同じことで悩んでるのだろうか。どれだけの期間悩んでいるのだろうか。
悠樹と付き合う。俺の答えはこれだ。それはもう現実のものになっている。
その答えは間違ってない。解答を導くまでにかなりの時間がかかってしまったが、自分が正しいと思える答えを出した。
なら、この先、何に迷うことがあるのだろうか。どうして今も悩んでいるのだろうか。




