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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第二編〜第二章〜悠樹√〜
242/384

共有の必要性 #1

「さてと……………………」

真弓は一息を入れる。準備は整った。何の? それは内緒だ。

「あ、真弓先輩っ!! 」

息をもらした、そのことだけで気付いたのか、少し離れた位置で何か他のことをしていたララが、急に背中に抱きついてきた。

「もー、ララちゃん。危ないよ」

「すいません。真弓さん」

ララの後を追うように慌てて来たランが、申し訳なさそうに頭を下げる。

「大丈夫だよー。もう私達は仲間だからねー」

……仲間……。

そう、仲間。この三人だけではない。同じ想いを持つ仲間はたくさんいる。

「えへへ」

ララがにまーっと笑う。この先のことを考えているのだろう。真弓自身も、そのララの笑顔につられそうになる。

「そっちは終わった? 」

「後少しです」

準備といっても、最終的に必要なのは気持ちだ。むしろ、それだけでやっていける可能性だってある。

……今頃は何してんのかなぁ、護達……。

もちろん、旅行。合宿。漣町にいる。そんなことは知っている。そこじゃない。その先。

「ねぇ、真弓先輩」

「どうしたの? 」

「後から追いかける必要はあったの? 」

「どうだろうねぇ」

ないといえばない。あるといえばある。確実に、自分でどう考えるか、そこである。

「でも、普通よりはたのしめそうですよね」

ランが同意をもとめてくる。そう、その通りだ。

「そういうことなの? 」

「まぁねぇ」

真弓も青春部に入った。それは、ララもランも同じだ。今回の合宿、青春部の皆で行く、そういうことになっていた。それが普通。

だが、真弓は断った。ララとランを連れて。そこから考えていたのである。

……青春部……。

もちろん、青春部の一員である。しかし、時期が時期だ。1学期が終わるそのタイミングで加入した。

個人個人での付き合いはあるだろう。でも、青春部の仲間、としての付き合いは全くないといってもいい。濃くない。

だからといって、その間、離れるということではない。身近に感じていたい。





「ん…………………………………………………」

また時間を確認する。護の隣に座っているものの、言ってしまえばそれだけのこと。何かしているわけではない。思った以上に時間は経っていない。

左を見れば護が、前を見れば他の青春部全員と咲夜さんが見れる。

……いや……。

違う。全員ではない。本当はここに三人プラスされる。真弓、ランララ。

……不参加……。

そう。三人はここにいない。全員で行きたい。杏はそう思っていたが、三人の、特に、真弓の意見を聞いて、杏はおりたと聞いた。どんな理由かは分からない。

……理由……。

参加しない理由。もちろん、悠樹には分からない。参加すれば護と一緒にいられるし、思い出だって作れる。

そんな旅行に、自ら参加しないと、そう言ったのだ。

……何か……。

考えてることがあったりするのだろうか。考えもなしに、こんな行動を取るとは思えない。

……動いている……。

あの日から、あの、七夕の日から。動き始めている。

自分の選択は正しかった。だからこそ、こうして、今、護の隣にいることができる。護の彼女でいることができる。満足している。

……護も……。

当然、同じ。想いの共有。

いつでも一緒にいれる。通わせることができる。満足できるに決まってる。

「……一番………………」

一番だ。自分が一番。

改めて思う。自分は一番になったのだと。護の一番に。それは変わらない地位だ。変えたくない。

「……………………護……」

「どうかしましたか? 」

「あ……、なんでもない……」

声に出てしまった。もうしょっちゅうだ。想ったら心の中でとどまらず、声に出てしまう。

「…………まもる」

ちょんちょん、と、いつものようにつついてみる。

護の顔が少し緩む。こそばい、と言われる時もある。

……暇……。

車に乗ってるだけ。もう少ししたらこの高速道路からも海が見えるらしいが、そこまでどうするか。

「ん」

考えることは案外たくさんあったりする。何をするか、何をすれば楽しいか、何をすれば皆が楽しめるか。これまでのように杏に任せておけばいい話ではあるが。考えてみてもいいものである。

……だって……。

いつも、杏は考えてきたのだから。自分達を楽しませるために。ひいては、それは、護を楽しませることにつながる。ということは、だ。護を楽しませれば、皆を続かせることができる。

悠樹もだけれど、自分達は単純だ。護が喜んでいるとこっちまで嬉しくなってくるし、護が悲しんでたりすると、それを見るだけで落ち込んだりしてしまうものだからだ。

いつも、心のどこかに護がいる。護がいなくてはならない状況を、自分自ら作っている。

それだけの存在なのだ。護は。

……もし……。

護に出会っていなかったら、今の自分はどうなっていたのだろうか。

青春部には継続して入ってはいるだろう。だとしても、こういう風に外に出て何かをする、なんてことはないと思う。杏は、護達が入部してくる前からあのポジションは変わらない。

……好きに……。

護が入部してこなければ、護との接点はこれっぽちもないわけだし、好きになる可能性も好きになってもらえる可能性なんて皆無であっただろう。

……むしろ……。

護が青春部に入った。これは、葵達が誘ったからだ。ということはだ。葵達が護のことを好きになっていなかったら、護とこういう風にして出会っていなかったということになる。

……なんか……。

改めて考えてみると、葵、薫、心愛の三人はどう思っているのだろうか。分からない。

好きであるから、より一緒にいるために青春部に。決して、そこは間違っていなかったのだろう。青春部にいるからこそ、勉強会や、七夕パーティー、今回の旅行がある。

たとえ入らずに普通にクラスメイトとして、仲の良い友達としてなら、ここまでのことは出来ていなかっただろう。旅行、なんてものは一番ハードルが高い。仲の良い友達だとしても、男の子と女の子。そこにそれ以上もそれ以下もない。

……メール……。

誰に? 葵にだ。


「………………………………ん? 」

何かの振動音がかすかに聞こえる。

渚や杏は気づいていない。一列目の右端にいる自分だけが気づいている。

「あ………………」

携帯だ。マナーモードにして電源は切っていなかった。

……メール……。

カバンの中から携帯を取り出すと、案の定着信が入っていた。

……悠樹先輩から……?

二列後ろにいる悠樹から。

……このタイミングで……。

一列間をまたいで話すわけにはいかないからメールなのだろう。後二時間と少しで漣町に着くだろうが、そこまで待てない、そんな話があるのだろう。

"この青春部に入っていなかったら出来なかった、ってことある?"

シンプルにこれだけ。簡素なメールだ。

「……………………んー…………」

まずはこの意図を考える。このタイミングで送ってきた意味を。

「どうかした? 葵」

「あ、いえ……。友達からメールが……」

「そう。ちゃんと返信してあげるのよ」

唸ってしまったからか、成美が声をかけてくれた。

……声に出さないように……。

思うだけにする。

自分の中での青春部の存在。そこには、護のこともついてくる。

「……………………違う」

逆だ。

護の存在が一で、そこに青春部がついてくる。

……その通りです……。

護と同じクラスになっていなければ、護に好意を寄せていなければ、あんな出会って初期の状態で青春部に誘おうだなんて思わなかった。絶対に。

出来なかったこと。

……うーん……。

すぐには思い付かない。

おそらく、満足しているからだろう。これまでの生活に、護との触れ合いに。

"今はないですね"

そう返しておこう。

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