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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第二編〜第二章〜悠樹√〜
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夏だ!海だ!合宿だ! #2

「あ………………………………」

一番乗り。そのつもりで家を出た悠樹。だが、高校が視界に入ると同時に、一人が見えた。杏だ。

……はやい……。

この合宿の発案者だから当然といったところか。いや、ただ楽しみ。そういうことなのかもしれない。まだ、集合時間までは二十分くらいある。でも、楽しみだから、皆、はやく集まることになるだろう。

悠樹は歩幅を大きくする。杏のところに向かう。

「あ、悠樹。おはよー」

「おはよう、ございます」

こっちから挨拶をしようと思ったけれど、やっぱり杏から。木陰にいた杏が走ってくる。

「二番目だねー」

「……ん」

「悠樹はまたワンピースなの? 」

「ん。これが楽」

白色の。涼しい格好。これでいい。護も喜んでくれる。褒めてくれる。

とりあえず、二人で皆を待つ。木陰に戻ることはない。

「悠樹は何がしたい? 」

「…………………………難しい」

護といることが出来るのならなんでもいい。本心だ。だけど、これは、皆同じ。答えにはならない。具体的にだ。

「海に入るのは当然…………? 」

「シーズン的に人は多いけど入らないと損だよ? 」

「分かった」

護や他の青春部の皆に見せるだけならそれほど嫌という気持ちは湧いてこないが、不特定多数の人に見られるとなると、少しだけ尻込みしてしまう。理由は言わずもがな。

「肝試しとかしたい? 」

「誰が仕掛けるの…………? 」

無論、護と一緒に回る人が出てくる。その座を手にするために何かしらする可能性もある。もしくは、全員が護と回る。さすがにないかもしれないけれど。

「仕掛けるというか、そういうスポットというか、ちょっと怖そうなとこを皆で回る。こんな感じでいいんじゃないかな」

「………………その方が楽」

「そうそう」

仕掛けるとなると、手間がかかってしまう。そんなところに時間はかけられない。もっと、重要なところに。そう思っているのは、悠樹だけではない。

青春部での合宿。旅行。もちろん、目的は一つしかない。分かり切っていることだ。

……護……。

護との関係性。彼氏と彼女の関係。悠樹にしてみれば、もう達成されている。もう、これより下の関係になることは絶対にない。

「……………………………」

言わないといけない。皆に。まだ、伝えられていない。三泊四日。いつの日になるか分からないけど、言わないといけない。気持ちに区切りをつけないと。言えていないということが嫌だ。後ろめたい気持ちがある。

言ったとして、その先、どうなるかはわからない。でも、皆との関係は崩れない。そう信じている。

「あ、そうだ」

「……? 」

「車の中で言おうとしてたんだけど、部屋割り、どうする? 」

漣町で何をするか考えていると思ってたけれど、どうやら、別のことを考えていたらしい。

「護を含めて十人」

「当然だけど貸し切りじゃないし、ピーク時だから」

また難しい質問がやってきた。




……どーするかなぁ……。

悠樹に聞いてみたのは、自分だけでは決められないから。全員の意見が必要だ。そう、誰が護と一緒の部屋になるのか。問題はそこだ。

「部屋はどれだけ借りたの? 」

「ん? 五つかな。大部屋が一つ、三人部屋が二つ、二人部屋が二つ」

「ん……………」

途端に悠樹の表情が変わる。もう考え始めている。

……んー……。

護と二人きりか、それとも、三人部屋に護を入れるか。そこも考えなくちゃならない。

そして、ワンフロアで五部屋借りられたわけではない。別々になっている。

「あと、ワンフロアじゃなくて、大部屋は二階、二つのうち一つの三人部屋と二人部屋の二つが三階で、もう一個の三人部屋が一階」

「そうなの……? 」

「さすがにワンフロアは無理だったみたい」

「わかった……」

皆、護と同じ部屋がいい。変えられない、その想いは。

……でも……。

どうなのだろうか。護は、どう思っているのだろうか。護は、一体誰が好きなのだろうか。まだ決めかねているはずだ。返事はまだもらっていない。

……答えを……。

護だけじゃない。こちら側も答えを出さないといけない。あまり先延ばしにするのもいけないだろう。

護を困らせることになる。そして、自分も。他の皆も。早急に、だ。

「じゃんけん…………」

ボソッ、と声を出す。

「え? 」

「部屋を分ける」

「あー、そういうことね」

「うん」

じゃんけん。もちろん順当だ。公平であるし、不満はでない。

……だけどねぇ……。

それでいいのだろうか。本当に。

ここまで来て、公平を図る必要はあるのだろうか。不正を働くというわけではない。そういうわけではなくて。

「嫌……なの……? 」

「んー……、そうじゃないんだけどぅ…………」

「じゃぁ、どうするの………………? 護と皆一緒にいたい……」

「分かってる、分かってる」

「ほんと……………………? 」

「うんうん」

「杏……………………? 」

「何? 」

こちらの顔を覗きこんでくる。上目遣いに。可愛い。女の子から見ても。

悠樹と杏は違う。体重も身長も。悠樹がして可愛いと思えることが、自分がやって可愛いとは限らない。全然違うことすらあり得るのだ。


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