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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第二編〜第一章〜悠樹√〜
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友達の想い

「来てしまった……………………」

もうすぐ5時。夏だから、日が沈むのは遅い。まだ暑いし、夜になっても暑いままだと思うと、気が滅入ってしまう。

「何してんだか………………」

心愛はため息をつく。バイトを終え、気がつけばここまで来ていた。

護の家。のすぐそこまで来ていた。もうすぐ、着く。護と会える。

「まぁ……………………」

そうとも限らない。どこかに出かけていて、まだ帰ってきてないかもしれない。

「悠樹先輩の誕生日」

今日は、そういう日。心愛は当日に祝ってもらえなかった。また、そんなことを思ってしまう。自分の行動力の無さに嫌気がさしてしまう。

「はぁ………………」

いろんな意味でため息が漏れる。自分の気持ちもそうだし、色々と。

「あっついなー、もぅ………………」

冷房の効いていた電車から降りると、すぐ暑苦しい風が吹いてきた。温度差が激しかった。

暑かったから、バイトもあったから、上は白色の、そんなに柄が入ってないTシャツ。下は、かなり短めのパンツだ。バイトの時は上から制服着るし、そのため。

「着替えるべきだった…………………………」

本当は、来るつもりなんてなかった。でも、来たくなってしまった。護に会いたくなってしまった。

「数時間前、教室で話してたけどねぇ……」

心愛の口から笑いが漏れる。

「心愛……? どうしたの。こんなところで」

「え…………? 」

突然の声。薫がそこにいた。驚いた顔で、こっちを見ている。

「薫こそなんで………………って、お隣さんだから不思議じゃないね」

「そりゃそうよ」

心愛を見た瞬間、少し切なそうにしていた薫だったが、心愛の言葉で笑った薫。一瞬にして雰囲気が変わった。

「で、どーしたの? 」

「なんとなく来たくなって」

護に会いたくなって。そう言わなくても、薫には伝わる。

「護家にいるけど、部屋、上がるの? 」

「いや……………………」

否定。そこまでしにきたわけではない。なんとなく、顔が見たかっただけ。それだけ。

「じゃぁさ、ちょっと歩こうよ? 二人で」

「今から!? 」

「そそ、気分転換にね」

……気分転換……。

「なるほどね……………………」

何かが分かってしまった。あんまり、知りたくはないことだけれど。

薫の家から見て、護の家は左。薫が歩いた方向は、逆だ。

「ふぅん………………」

「さっきからどうしたの?心愛。何か意味深」

苦笑しながら、薫が目を合わせてくる。

「何もないわ」

薫は分かっている。分かっていて、聞いたんだ。

質問を仕返そう。

「薫の方こそ、何かあった? 」

「どーなんだろ………………」

歯切れの悪い薫。もちろん、そんながはあまり見ない。付き合いが浅いのもあるかもしれないが。

「ねぇ、心愛」

「何? 」

「例えばの話だよ……………………? 」

「なんなのよ」

なかなか話を切り出そうとしない。薫の口は開かず、足だけが動いていく。心愛もそれについていく。ついていくだけだ。

「護が…………」

「護がどうかしたの? 」

「………………………………っ! 」

何か迷っている。そんな風に取れる。

……いや……。

迷っているのだろうか。言ってしまえばどうなるか。もしかしたら、怖いのかもしれない。

「今話す必要のあること? 」

心愛は待つ。薫が自分の意思で話してくれるまで。

「じゃないなら、薫が言いたい時でいいんじゃない? 」

護のことで苦しんでる。それだけは分かる。

「………………ん」

心愛は薫を見上げる。十五センチの身長差。俯いてる薫の顔を、心愛は普通に見ることができる。

……どうしようかなぁ……。

この薫の雰囲気。ある程度の推測は可能か。

自分は何なのか。友達だ。薫の友達。護の友達。青春部のみんなと友達。

友達が多いことにこしたことはない。だけど、それだけなのだ。友達。幼馴染とかではない。友達だから、それより上の存在がいたら、友達は後回しにされる。そういうものなのだ。

……んー……。

だからこそ、心愛は、その先を願っていた。護との関係性を向上させるために。

友達。

もうすでに、友達以上の関係にはなっているかもしれない。だって、告白もしたし。でも、それは皆一緒なのだ。

夏休み。予定はある。もちろん、護との予定だ。でも、二人きりではない。雪菜がそこにいる。咲夜がいる。いってしまえば、邪魔が入るわけだ。

二人きりの空間ではないのだから。

薫は、まだ足を前に動かし続けている。散歩は、まだまだ終わらないみたいだ

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