想いの所在 #4
羨ましい。
素直にそう思う。悠樹のことが羨ましいと思ってしまう。
だって、自分とは違うのだから。護に誕生日を祝ってもらっているのだから。
もちろん、心愛だって祝ってもらっている。そこが違うのではない。当日に、六月六日に祝ってもらえなかった。だから、悠樹に対して思うのだ。加えて、嫉妬という気持ちも。
悠樹と自分の違い。そこを認めるしかない。
積極性の違い。そこが違う。
悠樹は当日に祝ってもらっているけれど、心愛はそうではなかった。
伝えていなかった。護に誕生日を。知らないのだから、祝ってもらえるわけがない。
……自分のミスだね……。
どう考えても、自分に落ち度がある。
積極的に。それは、前から思っていたこと。護のことが好きなんだと自覚したその日から。
まっすぐに。自分の気持ちに対して。護に対して。
だって、そうでもしないと、自分に勝ち目がないと思ってたから。
最初から、恋敵が二人いた。今は、それよりもたくさん増えてしまっている。だから、より、頑張らないといけない。
薫と葵。護と幼馴染の薫と、学級委員長という接点がある葵。その二人に、ただの友達である心愛がどこまでやっていけるか。それを考えていくだけでよかった。
だけど、今は違う。それだけではいけない。無理なこと。
青春部の先輩達。それは強力ではあるけれど、始まりは心愛達よりも下なのだ。
時間が経った今、強力だと思う。そう思わざるを得ない。
それは何故か。心愛に理由があるから? 否、それは違う。全く違うというわかではないけれど。
先輩達が頑張ったからだ。自分達と同じように、隣にいようと。
同じクラスでもなければ、同じ学年でもない。顔を合わせる機会が限られている。なら、当然のことなのだ。恋に頑張る、ということは、こういうことなのだ。何もおかしなことはない。
だからこそ、積極的に行動できる。
思っているだけではダメだということを痛感させられる。悠樹を通して。皆を通して。
「よし…………っ」
声に出してみる。そして、決意する。
今日からまた、頑張ろう。心を入れ替えよう。ちょうど、今日から夏休み。タイミング的にはばっちりだ。ここを見逃すわけにはいかない。
この恋の戦い。負けたくない。負けるわけにはいかないのだ。




